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10月25日:猿も道具を使うだけでなく、石を加工する(Natureオンライン版掲載論文)

2016年10月25日
    人類の歴史を遡る考古学は、「骨と石」の学問と呼ばれている。最近、骨の役割は、そこに含まれるDNAまで広がっているが、石、すなわち石器により人類をサルから区別することはこれまでと同じだと考えていた。この分野を知りたい人たちにはRobin Dumbar 「Human Evolution,(邦訳あり)」を進めるが、この本でもアフリカで2足歩行の先祖がサルから別れた後、かなり時間が経った後Homo Habilisの出現とともに石器を使うようになったと書かれている。
   では、サルは石器を作らないのか?これまで道具を使うサルは、ニホンザルも含め何度も記述されてきた。ただ、石を貝殻状に割ってナタのように加工したり、尖らせたりすることはほとんど観察されていなかった。特に、ボノボに石器作りを見せても、自分から石器を作ることがないという観察から、石器は人類の証拠という枠組みを疑う人は少ない。
   これに対し今日紹介するオックスフォード大学からの論文ではブラジル国立公園に棲むカプチンザルの一種は、石器(のようなもの)を繰り返し作ることを報告した研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Wild monkeys flake stone tools (野生猿は石器を削る)」だ。
   ただ、タイトルは少し誤解を招く。というのも、本当はこれが石器、すなわち道具として使われるという証拠がないからだ。
   この研究ではブラジルのカプチンザルが小さい石に重い石をぶつけて、貝殻状のシャープな刃を持った石器様の石を多く作ることが詳しく観察されている。重い石は600gに及ぶことを考えると、間違いなく偶然ではなく、何かの意図を持って作っている。そして、この方法で生まれる石器様の石は、Homo habilisとともに発見される石器に酷似している。
   実際話はこれだけだが、「猿も石器を作る」とは結論できない。
   まず、この石器様の石には植物であれ、動物であれ生物を処理するのに使った痕跡がないことだ。著者らも、石と石をぶつけるのは、それにより生まれる石の粉を食べるため、あるいはそこに付着している地衣類を剥がして食べるためではないかと考えている様で、決して道具作りとは考えていない。
   しかし、この発見は「骨と石」の考古学にとっては重要な意味を持つ。すなわち、初期石器時代と言われる、石と石をぶつけただけの石器が、実際に石器だったかどうかを証明しないと、これからは石器=人類とは言えないことだ。過去についての学問の難しさがはっきりと示された研究だ。    次にどんな反論が出るのか、あるいは旧石器時代の研究がどう変わるのか、楽しみだ。

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