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2月8日:乳がんの骨転移を抑制する薬剤(Science Translationa Medicineオンライン版掲載論文)

2017年2月8日
    ガン治療はまず原発巣を完全に制御することが最重要だが、次に転移を防ぐことが重要な課題になる。中でも乳ガンは、原発巣を切除した後、すっかり治ったのかと思っていたら急に転移が見つかり患者さんを失望させる。末梢血中に流れるガン細胞の数を調べる方法の開発により、乳ガンは早い時期から血中に漏れ出す性質を持つことがわかってきた。従って、漏れ出しても他の組織で増殖できなくする方法の開発が重要だ。
   今日紹介するユタ大学からの論文は、骨を溶かす破骨細胞の活性を制御して乳ガンで多い骨転移を抑える薬剤の開発についての論文でScience Translational Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「RON kinase:a target for treatment of cancer-induced bone destruction and osteoporosis(RONキナーゼ:ガンにより誘導される骨吸収と粗鬆症の治療標的) 」だ。
   乳ガン骨転移のためには、骨を吸収しできた足場の中で増殖しなければならない。ほとんどの癌細胞自体は骨吸収能力がないため、もともとホストが持っている吸収能力を活性化しなければならない。これには骨を吸収する破骨細胞の活性化が必要で、従来から破骨細胞を抑制して骨転移を抑える治療が試みられていた。しかし、この切り札とみられていたRANKL抑制の効果が思ったほどでなく、他の経路が探索されていた。
   以前このグループは、マクロファージ刺激因子(MSP)を過剰発現した癌細胞が骨転移しやすいことを見出しており、この研究はその続きになる。結果はクリアで、まとめると、
1) MSPは破骨細胞が発現するRONキナーゼ受容体を活性化して、破骨細胞の骨吸収機能特異的に促進する、
2) RON刺激による破骨細胞活性化にはRANKLやTGFβシグナル系の関与はなく、破骨細胞の増殖や分化も変化せず、機能だけが促進する。
3) RON刺激は細胞内のSrcキナーゼを活性化して、破骨細胞の機能を更新させる。
4) RONキナーゼ阻害化合物により骨転移が抑えられる。
5) RON阻害化合物の中でもRONに対する特異性が弱い OSI-296は骨転移後の乳がんの増殖を抑える。
6) よりRON特異的阻害剤は、閉経後の骨粗鬆症を抑制する。
になる。
   この結果から見えてくるのは、乳がんの初期に骨転移を防ぐため、RON特異的な阻害剤を服用すること、また骨転移が発見されたらOSI-269により骨吸収とガン自体の増殖を抑える。必要なら、RANKL1阻害やTGFβ阻害も組み合わせてガンの骨内での拡大を防ぐ、といった治療法だ。血中の癌細胞数がCTC検査で多いかどうか調べて、予防投与を行うこともできる
   幸い、RON特異的な阻害剤の方は第1相の治験により、安全性が確認されているので、乳がん骨転移の予防効果についても治験へのハードルは低いだろう。私の印象でしかないが、期待できそうだ。

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