AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 7月19日:エクソゾームによるインターフェロン誘導:少し出来すぎの話(7月13日号Cell掲載論文)

7月19日:エクソゾームによるインターフェロン誘導:少し出来すぎの話(7月13日号Cell掲載論文)

2017年7月19日
エクソゾームは細胞膜が飛び出すようにして形成される小胞で、細胞質に存在するタンパク質やRNAなどを含んでいるため、生理学的には、細胞から細胞へ細胞質の分子を運び、相手側の細胞の分子発現を変化させる役割があるのではと注目され、また臨床的には、細胞内に発現している核酸などが小胞に守られて存在することから、ガンなどの遺伝子診断に利用できるのではと期待され、研究が進んでいる。
   今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、エクソゾームが細胞内のインターフェロンを中心とする細胞内の抗ウイルス反応を誘導して、ガン細胞の増殖を高める役割があることを示す研究で7月13日号のCellに掲載された。タイトルは「Exosome RNA unshielding couples stromal activation to pattern recognition receptor signaling in cancer(保護されないRNAを含むエクソゾームはストローマ細胞の活性化をガン細胞のパターン認識レセプターシグナルとを連結させる)」だ。
   原核細胞やアルケアの抗ウイルス反応はCRISPR/Casが中心だが、我々哺乳動物ではウイルス由来の核酸を認識するRIG-Iを介するインターフェロン誘導が中心になっている。このグループは、乳がん、特にトリプルネガティブ乳ガンの多くでウイルス感染時と同じようなインターフェロン反応性の遺伝子(ISG)の発現が高いことを把握していた。
   今回の研究では、乳ガンでウイルス感染の代わりにISGを誘導しているのが、乳ガン周りのストローマ細胞からエクソゾームを介して乳ガン細胞に侵入してくるRNAではないかと最初からあたりをつけ、研究を行っている。
  その結果、
1) 乳ガン細胞により刺激されたストローマ細胞からのエクソゾームがウイルス感染と同じようにRIG-Iを介してISGを誘導する。
2) RIG-I活性化できる様々なRNAがISGを誘導できるが、この実験系では中でもRNAとして働いているRN7SL1が特に濃縮されており、これがISG誘導の主役になっている。
3) 通常RN7SL1にはSRP9,SRP4などが結合して、RIG-I活性化することがないが、ガン細胞により活性化されたストローマ細胞では、このシールドが外れ、ISG誘導が起こってしまう。
4) ガン細胞はNotchシグナルを介してストローマ細胞のMyc分子の発現を高め、これがRNAポリメラーゼIIIの発現を上昇させ、シールドされないRN7SL1産生を高める。このシールドされないRN7SL1がエクソゾームに詰め込まれ乳ガンに侵入してISGを誘導する。
5) 乳ガン細胞にシールドされないRN7SL1が導入されると増殖能力が上がり転移しやすくなる。
6) 実際の乳ガン組織ストローマ細胞でもNotch, Mycの発現が上昇している。
ことを示している。
  ガンで刺激した時だけシールドが外れるなど少し出来すぎのシナリオだが、エクソゾームがmiRNAなど相手方の翻訳に関わるRNAが濃縮されたミサイルと考えるよりは、より理解しやすいように思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*