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2月20日 腎臓癌の免疫療法感受性(2月16日号Science掲載論文)

2018年2月20日
1昨年より転移性の腎臓癌に対して抗PD-1抗体を使う治療が保険適用になっている。もともと腎臓癌にはインターフェロン療法が行われており、ガン免疫が成立している可能性が高いと考えられてきたことから、ある意味で当然とも言えるが、この場合もだいたい20−25%の患者さんに効果が見られ、完全に腫瘍が消失するのは1%程度だ。結局、誰に効果があるかどうか予測することは難しい。

今日紹介する米国・ダナファーバーがんセンターを中心とする研究は、腎臓癌の中でオブジーボが効く可能性を予測するマーカーの開発研究で2月16日号のScienceに掲載された。タイトルは「Genomic correlates of response to immune checkpoint therapyes in clear cell renal cell carcinoma(腎臓の明細胞ガンのチェックポイント治療に対する反応性と関連するゲノムマーカー)」だ。

この研究でも対象は転移性の腎臓癌で、まず癌組織を取り出しエクソーム解析をした後、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体治療を行っている。効かなかった患者さんでは3ヶ月で抗体投与を中止しているが、一定の効果が見られた患者さんでは抗体を投与し続けている。このようなコホート研究の結果、チェックポイント治療の効果があった患者さんと、そうでない患者さんのゲノムを比べ、抗体の効果と相関する遺伝子を探索すると、PBRM1と名付けられた、クロマチンの調節に関わるPBAF複合体のメンバーと強く相関することがわかった。生存曲線をPBRM1が欠損した癌と、それ以外で比べると、2,5年の時点で7割を超す患者さんが効果を維持している。

はっきり言って、話はこれだけだが、臨床的には重要な発見で、今後腎臓癌に対するオプジーボなど免疫チェックポイント治療を行うとき、PBRM1遺伝子を効果予測のマーカーとして使える可能性が示された。さらに、PBRM1が欠損しているのに治療が効かなかった患者さんの癌の解析から、癌抗原を提示するために必要なβ2ミクログロブリンの発現が抑えられている時はPBRM1が効かないことも明らかにしている。すなわち、この分子はガン自体の持つ免疫刺激性に関わる。 ただこれだけではそっけないので、最後にPBAF複合体が欠損している癌を調べ、PBRM1が欠損すると、IL-6やその下流、そしてTNFαなど、周辺のT細胞に働きかけて癌免疫を刺戟する分子が上昇していることを確認している。特にJAK-STAT3はインターフェロンシグナルにも関わっているので、これまでの腎癌治療法ともつながってきたように思える。逆にこの結果は、PBRM1が欠損しない患者さんでも、免疫を高めてチェックポイント治療を高めることが可能になるかもしれないことを示唆している。 昨日と同じで、クロマチンの調節分子が全くランダムではなく、特定の機能に関わる可能性を示す論文だが、もともと癌ではBAFやPBAFの構成分子の突然変異が多いことも知られており、個人的にはうなづける。 ほかのガンについても、ネオ抗原以外に同じような効果予測マーカーが続々明らかになるのを期待する。

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