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3月29日:自閉症では成長とともに扁桃体神経細胞の減少がみられる(米国アカデミー紀要オンライン掲載論文)

2018年3月29日
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扁桃体とは文字どおり、私たちの脳の底の方に存在するアーモンド型をした神経細胞の塊で、さらに外則核、基底核、副基底核に分けられる(実際にはもっと詳しく分けられるが省く)。サルで扁桃体を障害すると、例えば蛇を見たときに示す恐怖行動がなくなるなど、基本的な情動と呼ばれる反応が障害される。このことから、自閉症でも最も研究が進んでいる脳領域の一つで、例えばてんかんの診断用に留置した電極で扁桃体の活動を持続的に記録し、一般児なら目に反応する領域が口を見たとき反応することや、情動に関わる課題を行うときの扁桃体の反応が一般児と異なることも示されている。これらの結果から、発生・発達過程で形成される扁桃体が関わる神経回路の変化が自閉症の症状の元になっていると考えられるようになった。このことは、MRIを用いる脳内の結合や、構造を調べる検査でも確認されている。ただ、実際の脳がどうなっているのかについては死亡後の解剖が必要で、画像解析の病理学的確認は系統的には進んでいなかった。

今日紹介するカリフォルニア大学デービス校からの論文は、米国のバイオバンクに保存されている、自閉症と診断された様々な年齢の脳の扁桃体の大きさを詳しく解析した極めて古典的な研究だが、24例もの自閉症の症例を系統的に観察した点で重要な研究になった。タイトルは「Neuron numbers increase in human amygdala from birth to adulthood, but not in autism(扁桃体の神経細胞数は生まれてから大人にかけて増加し続けるが、自閉症ではそうではない)」で、米国アカデミー紀要にオンライン出版された。

すでに述べたように、病理組織を正確に計測して扁桃体の正確な細胞数を計算しただけの研究で、結論も極めて単純だ。

まず、正常人の場合扁桃体細胞数は50歳に至るまで増加を続け、最初1千100万個だったのが、1千300万個にまで増加する。普通神経細胞は増殖しないとされているので、扁桃体は全くの例外であることがわかる。一方自閉症症例では、最初(2歳齢)は1千200万個と正常より10%近く多いのに、その後は減少を続け、40歳では1千万個と20%近く減少してしまう。この減少は扁桃体のすべての核で見られるが、基底核で最も変化が大きい。同時にBcl2の染色を行って未熟細胞の数を比べているが、こちらの方は一般人と自閉症で特に大きな違いは見られない。

以上が結果のすべてで、最も驚くのは、普通なら増加する神経細胞が自閉症で細胞数が減り続けていることだが、もちろんその原因はわからない。例えば、社会とのコンタクトにより普通なら適度の刺激で神経増殖が刺激されるところが、強い反応が続く結果、細胞が失われる可能性などが考えられるが、今後遺伝子発現も含む詳しい検査を進めて欲しいと思う。もちろん、神経間結合を明らかにすることも重要だ。しかし、まだまだ時間はかかりそうだ。しかし、今でも病理学的検査は重要な最終検査であることは間違いない。その意味で、しっかりとバイオバンクにこれほどの数の標本が維持されているのは心強い。病理学としては最も苦手な領域だろうが、期待している。

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