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なぜレナリドマイドが骨髄腫やBリンパ腫に効果があるのか?(骨髄腫、リンパ腫)

2013年12月8日

骨髄腫は化学療法治療により長期の生存が可能になって来た腫瘍の一つだが、それでもなかなか完治の難しい腫瘍だ。しかし最近サリドマイド及びサリドマイド由来の化合物レナリドマイドが骨髄腫特異的な効果があることが分かってきて、生存率の大幅な改善につながっている。ほとんどの年配の方なら大きな薬害事件としてサリドマイドという薬を覚えておられると思う。これは本来鎮痛催眠剤として用いられたサリドマイドを妊婦さんが服用し、そして生まれた多くの子供が四肢の発育異常を示した世界的に大きなスキャンダルになった事件だ。サリドマイドはセレブロンと言う分子に結びつく事で手足の成長に関わる増殖因子が壊されてしまうためである事がわかっている。サリドマイドによる四肢の成長阻害のメカニズムについては、半田さん(東工大)や小椋さん(東北大)の貢献により明らかにされている。しかし、骨髄腫で同じメカニズムが働いている証拠はなく、解明が待たれていた。先週サイエンス誌オンライン版に掲載された2報の論文はこのメカニズムがついに明らかになったと言う事を報告している。両方とも同じ内容なので先に掲載されている方だけ紹介しよう。タイトルは「Lenalinomide causes selective degradation of IKZF1 and IKZF3 in multiple myeloma cells (レナリドマイドは骨髄腫細胞内でIKZF1, IKZF3分子の特異的分解を誘導する)」で、ボストンのBrigham Women’s Hospitalの研究だ。結果はわかりやすい。先ず入り口は半田さんや小椋さんがサリドマイドで明らかにした結果と同じで、骨髄腫細胞でレナリドマイドが結合するのもセレブロン分子を含む蛋白質分解に関わる複合体だ。ただ、骨髄腫細胞ではこの複合体によって分解される分子が、半田さん達が見つけた増殖因子ではなく、リンパ球の発生や増殖に重要な働きをする事が知られている二つの分子、IKZF1, IKZF3である事が明らかになった。なぜこの二つの分子が骨髄腫の増殖に必須であるかなどの詳細は省くが、レナリドマイドによりIKZF1, IKZF3の2種類の蛋白質が特異的に分解され、その結果細胞が増殖できなくなることが、骨髄腫にこの薬剤が効くメカニズムだ。しかし、特定の蛋白質の分解を化合物で誘導できると言う今回の研究は、新しい可能性を示している。先ず、メカニズムが明らかになる事で、レナリドマイドより更に優れた薬剤の開発が可能になる事だ。もう一つの可能性は、同じメカニズムを使って、異なる腫瘍で、異なる分子を特異的に分解する可能性だ。いずれにせよ、この重要な研究のルーツに半田さんや小椋さんの研究がある事も是非銘記しておきたい。


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