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7月23日 胸腺にもTuft細胞が存在する(Natureオンライン掲載論文)

2018年7月23日
消化管や気管のような内胚葉由来の上皮組織には、アピカル面に絨毛がびっしり生えていることからTuft(房)細胞と名付けられた細胞が存在することが古くから知られている。Tuft細胞の形態学的特徴が味を感じる味蕾細胞に似ていることから、Tuft細胞も化学物質を感知する能力を持っているのではないかと検索が行われ、確かに味を感じるシグナル経路に関わる分子が発現している事が明らかになっている。

今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は同じようなTuft細胞がなんと胸腺の上皮にも存在し胸腺内のT細胞選択に重要な役割を演じているという研究でNature にオンライン出版されている。タイトルは「Thymic tuft cells promote an IL-4-enriched medulla and shape thymocyte development (胸腺内のTuft 細胞はIL-4が強く発現した胸腺髄質を促進してT細胞分化を指示する)」だ。

胸腺髄質の上皮細胞は転写因子Aireの発現しているが、この研究ではAireを発現した細胞を標識して追跡する実験を行なっていたとき、味覚センサーを発現し、IL25を分泌する消化管や気管のTuft細胞と同じような細胞が存在することを発見する。

そこで小腸のTuft細胞を精製して遺伝子発現を比べると、Tuft細胞に分類できるだけの共通性は持っているが、例えば小腸のTuft細胞では発現のないクラスII MHC分子を発現している。また、胸腺のTuft細胞はさらに多くの化学センサーを備えていることも明らかにしている。これらの結果から、胸腺にもTuft細胞は存在するが、内胚葉臓器とは異なる新しい種類のTuft細胞として分類できると結論している。

次に胸腺Tuft細胞の発生について調べ、HipK2とPou2f3分子が胸腺上皮の中でもTuft細胞分化特異的に必要だが、この細胞が欠損しても胸腺全体の構築などは大きく影響を受けない。しかしよく調べるとEomesodermin陽性のCD8細胞とともに、NKT2細胞が低下して、IL-4の分泌が髄質で低下する状況が生まれている。面白いのは、同じような異常が化学センサー(味センサーといってもいい)の構成分子Trpm5欠損マウスでも誘導される点だ。すなわち、Tuft細胞のT細胞分化に関わる機能が発揮されるためには、この分子を介したセンシングが必要であることを示している。また、Tuft細胞をnude mouseに移植する実験から、この細胞が発現する自己抗原による免疫寛容誘導にも関わることも示している。

腸管内のTuft細胞はIL-4依存性のタイプ2免疫反応の誘導に関わることがわかっているが、以上の結果は胸腺内でもTuft細胞は特殊な環境を提供して、NKT2細胞やeomesodermin陽性CD8の分化、そして自己抗原に対する免疫寛容に関わることを明らかにした面白い研究だと思う。Tuft細胞に似た細胞が胸腺にあるだけで驚くが、ここまで複雑な選択に関わっているとすると、免疫の制御がいかに難しいかよくわかる。

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