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11月1日:自然免疫細胞の遺伝子発現の細胞間、及び種間の多様性(10月24日号Nature掲載論文)

2018年11月1日
ガンの免疫療法を考えると、現在実用化されているチェックポイント治療は、ガンを殺すのに必要な免疫反応の強さの閾値を下げて効果を高める方法といえるが、他にも多くの標的過程がある。中でも、がんの免疫を成立させる入り口の増強は極めて重要だ。この時、昔ならガン特異的な免疫反応だけが問題になったが、今では自然免疫系の関与の重要性が十分理解され、これを活性化させるのがアジュバントや腫瘍溶解性ウイルスになる。この系は、種差や人種差が大きいことが知られており、大きな多様性が生まれるメカニズムを理解することは、この系を標的にする治療法開拓には重要な問題だ。

この自然免疫の種間の多様性の問題を、 Poly I/CやLPSのような自然免疫刺激剤を異なる動物に注射し、それに対する線維芽細胞やマクロファージの遺伝子発現の差として正確に定義し、多様性のメカニズムを調べたのが今日紹介する英国サンガー研究所からの論文で10月24日号のNatureに掲載された。タイトルは「Gene expression variability across cells and species shapes innate immunity(遺伝子発現の種間の差と、細胞間の差が自然免疫を形作る)」だ。

極めて直線的でシンプルな実験が行われている。目的は自然免疫反応の多様性を理解することで、このため人間を含む様々な動物を準備し、その皮下に刺激物質を投与、同じ種類の細胞の転写レベルでの反応の多様性を調べている。また同時にsingle cell transcriptome を行い、個々の細胞での遺伝子発現の多様性も調べている。

実験は、人間、猿、げっ歯類にPoly I/C を注射し、ファイブロブラストの遺伝子発現を調べただけの、直接的で単純な実験で、単純とはいえ好感が持てる。ただLPSを注射してマクロファージの反応を調べる実験は、流石に人間を対象にはできなかったようで、代わりにウサギ、ブタを使って調べている。

この結果、インターフェロン、TNF、IL1など、全ての種で共通に上昇する分子も多く存在するが、ウイルスの処理に関わる数多くのサイトカインやケモカインの発現の強さは種により大きく変動する。同じ多様性は、マクロファージのLPSに対する反応でも見られる。

次に、これらの遺伝子発現の強さの違いが、プロモーターのエピジェネティックな状態と対応しているのかどうか、遺伝子発現が活性化された遺伝子に結合しているH3K4me3の結合を調べると、種間の多様性が大きな遺伝子ほど、予想とは逆に活性型のヒストンと結合していることがわかった。さらにこれらの遺伝子のプロモーター領域は、遺伝子発現で大きな種差があるにも関わらず、配列が保存されているという、少し進化の常識から外れた結果が示された。

この原因を追求して、種差の大きな遺伝子は、TATA型のプロモーターを持つが、メチル化の標的になるCpG islandが抜けているという特徴を持っていること見出している。そして、この種差が大きくなるプロモータを持っている遺伝子の多くが、サイトカインやケモカインをコードしていることがわかった。 炎症に最も重要なサイトカインやケモカインの発現の種差が、逆に大きいというのは、予想に反するが、それぞれの種で、細胞間の遺伝子発現を調べると、種差の大きなサイトカインやケモカインの遺伝子が、細胞間の発現でも、大きな多様性を示すことがわかった。すなわち、細胞間、種間を問わず、発現に大きな多様性が生まれるようなプロモーターの構造が多くのサイトカインやケモカインで維持され、もともと細胞レベルでも発現の多様性が構造的に高く、この結果進化速度も上昇することが示唆された。実際、発現の種差の大きいサイトカインほど、遺伝子配列の多様性も大きい。

話は以上で、結論は少しわかりにくいかもしれないが、多様な外界のストレスに対応して、迅速に進化できる自然免疫のエフェクター分子の多様性を支えるのが、発現レベルでの多様性をを積極的に生み出すように進化したプロモーターの特殊な構造にあり、これが種間で自然免疫系が多様化する原動力になっていると結論している。 人間を含め異なる動物を直接比べた点は評価できるが、本当にこれが正しい解釈かどうか完全に納得というわけにはいかない論文だった。

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