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11月8日 え!片頭痛にも抗体薬?(The Lancet オンライン版掲載論文)

2018年11月8日
オプジーボもそうだが、今や苦労して標的に結合する化合物を探すより、標的に対するモノクローナル抗体を作ったほうが、薬になるという風潮が蔓延しているように思う。抗体薬が細胞表面の分子に対してしか効果がないということがわかっていても、現在も多くの抗体薬がFDAの認可を受けようと臨床治験が行われている。抗体の持つ標的に対する特異性を考えると、開発の確率から考えても、細胞表面分子なら抗体薬というのはうなづけるが、しかし限られた医療費で今後効果が示された抗体薬を本当に万人平等に使うことができるのかいつも心配になる。

とりわけ今日紹介するロンドン大学からの論文はなんと偏頭痛まで抗体薬を用いて治そうとした治験論文でThe Lancetオンライン版に掲載された。タイトルは「Efficacy and tolerability of erenumab in patients with episodic migraine in whom two-to-four previous preventive treatments were unsuccessful: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b study (これまで2−4種類の方法でも治療できなかった反復性の偏頭痛に対するerenumab効果と安全性)」だ。

私自身はほとんど頭痛で困ったという経験はなく、ましてや偏頭痛が反復することなど全く経験したことがない。しかし、この論文を読むと、かなり多くの人が片頭痛で苦しんでおり、偏頭痛は労働を阻害する2番目の要因になっているようだ。それにもかかわらず、現在行われている片頭痛の治療は対症療法だけで、それも効かないケースが当たり前という有様なようだ。これまでの研究で、偏頭痛の原因の一つとして、37個のアミノ酸からなるポリペプチドCGRPの関与が示されていた。

この論文はこのCGRPに対するモノクローナル抗体を用いてこれまで薬剤が全く効果を示さなかった片頭痛を治そうとした治験研究で、2−4種類の治療を試したが全く効果が見られなかった人を集め無作為化して、抗体(erenumab)か偽薬を月に1回、3ヶ月間注射し、偏頭痛の頻度が50%以上低下した患者さんの割合を調べている。驚くのは、12週間でも14%近くの偽薬を用いたグループで効果がある点だ。偏頭痛の難しさがよくわかる。ただ、偽薬とくらべた時、erenumab投与群では30%の患者さんが偏頭痛の頻度が50%以上改善している。一方、この治療による副作用は、3ヶ月という範囲ではほとんど何もない。

この抗体薬を用いても7割の人の偏頭痛は改善しないのだが、それでも3割の人の偏頭痛はたしかに解消して、生活の質も上がったとすると、治験としては効果があったという結論になるだろう。しかし薬価がいくらになるのか分からないが、偏頭痛にまで抗体薬が進出しているのを見ると、ちょっと複雑な気持ちになってしまうのは、偏頭痛持ちの人の気持ちがわからない私だけだろうか。

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