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11月25日 マンノースを食べるとガンを弱体化できる(Natureオンライン版掲載論文)

2018年11月25日
最近代謝研究が進み、こんなことがわかっていなかったのかと思うような話が発表される。例えば今年2月に紹介した果糖がなぜ肝臓障害を起こしやすいのかを示した論文(http://aasj.jp/news/watch/8072)はその一例で、糖の代謝などとっくにわかっていると思わず、調べてみることの重要性を示している。

今日紹介するCancer Research UKからの論文も結構驚きの話で、今度はマンノースのガンに対する作用について示した研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Mannose impairs tumour growth and enhances chemotherapy(マンノースは腫瘍の増殖を抑制し、化学療法の効果を促進する)」だ。

最近、ガンは自分の増殖を支えるために、グルコース代謝が正常細胞より亢進しており、それをガンのアキレス腱として標的にできることがわかってきた。この研究もそのうちの一つと言えるが、グルコースと同じ単糖にもグルコース代謝を抑制できるものがあるのではと、培養ガン細胞に様々な単糖を加える実験を行い、一部のガンの増殖をマンノースだけが抑制できることを発見する。

最初単純に細胞内へのトランスポーターをグルコースと競合するからかと単純に考えたようだが、最終的にマンノース摂取により細胞内で上昇するマンノース6リン酸がグルコースから乳酸への経路、あるいはTCAサイクルなど、様々なグルコース代謝経路を抑制することを明らかにする。すなわち、グルコース代謝が高まっているガンで特にこの効果が高い。そこで、一般に用いられる抗がん剤との併用効果を調べると、マンノースは抗がん剤にさらされたガン細胞の細胞死を、ミトコンドリア膜で細胞死を調節しているBclX, Mcl-1の翻訳を抑えることで、促進していることが明らかになった。そして、試験管内でマンノースの効果がはっきりしているガンでは、マウスのガン治療モデルで、マンノースを食べさせることで化学療法の効果を高めることが明らかになった。

最後に、マンノースの効果の見られるガンと、そうでないガンを比べ、マンノース6リン酸とフルクトース6リン酸の間の転換に関わる酵素PMIが高いと、マンノース6リン酸の細胞内濃度が低下し、効果が薄れる可能性に気がつく。そして、マンノースの効果がないガンも、PMIをノックアウトすると効果が現れることを示している。また、直腸ガンでは一般的にPMIの濃度が低いことから、マンノースの効果が高いと予想できると考え、マウスモデルでこれを証明している。

話はこれだけだが、マンノースという安価な糖を用いてガンを抑制することができるという発見は、臨床的にも重要だと思う。以前紹介したが、ビタミンCの大量静脈注射など、副作用が強くなく、どの機関でも使いやすいガン治療法が開発されるのは望ましい。この研究では、効果が期待できるかどうかについても予測できる指標まで開発しており、ぜひ早期に臨床治験を進めてほしいと思う。副作用がないと言っても気になる点もある。例えば、マンノースは抑制性T細胞を増やすことが昨年報告されている。とすると、癌に対する免疫が落ちるかもしれない。その意味で、化学療法と併用しても、副作用がないからと飲み続けるのは問題になる。このような薬剤は、決して根治につながるものではないため、一般的なガン治療の補助剤として使うことになるが、まずコストはほとんどかからないだろう。ガンの代謝研究の重要性を認識できるいい研究だと思う。

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