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CRISPRを網羅的遺伝子改変による網羅的分子探索(Science誌オンライン版)

2013年12月31日

素晴らしい技術は様々なテクノロジーや分野を統合するハブになる力がある。12月26日ここで紹介した、生きた細胞で特定の遺伝子を視覚化することを可能にしたCRISPRという技術はその典型だ。これまで困難であった事を一つ一つ見事に可能にしていく。先週サイエンスオンライン版に掲載された2編の論文では、この技術を使ってほぼ全ての遺伝子にまんべんなく突然変異が導入された細胞のライブラリーを作成し、細胞の機能に関わる遺伝子をしらみつぶしに見つける方法を報告している。両方ともマサチューセッツ工科大学からだ。タイトルは一つが、「Genetic screens in human cells using the CRISPR/Cas9 system (CRISPR/Cas9系を使ってヒト細胞の遺伝的スクリーニングを行う)」、もう一つが「Gnenome-scale CISPR-Cas9 knockout screening in human cells (DRISPR-Cas9システムを使った、ヒト細胞での全ゲノムスケールの遺伝子ノックアウトスクリーニング)」だ。
   前にも述べたが、この方法では短いガイドRNAを変異を導入するホストゲノムの場所決めに使う。このRNAの配列をヒトゲノム配列を参考に設計すれば、ほとんどの遺伝子に高率に変異を導入するためのガイドRNAライブラリーを作る事が出来る。このライブラリーを調べたい細胞に導入すると、別々の箇所に変異が入った何万種類の細胞ライブラリーを用意出来る。この細胞集団を例えば抗がん剤で処理すると、それに抵抗性の突然変異を持った細胞だけが生き残る。両方の研究とも、このガイドRNA配列に、遺伝子変異のためのガイドと、どの遺伝子に変異を入れたかを知るためのバーコードの両方の目的を担わせている。このため、残った細胞でどの遺伝子が欠損しているかを次世代シークエンサーを使って簡単に見つける事が出来る。同じ様な試みは他の遺伝子改変テクノロジーを使って試みられて来たが、それ等と比べてこの実験系の凄いのは、変異が導入される効率が高く、両方の染色体とも特定の遺伝子に同じ変異を入れる事が出来る点だ。このおかげで、遺伝子の機能を両方の染色体で完全に欠損させる事が簡単にできる。一つの論文ではこの方法を使って、前に紹介した悪性黒色腫がガンの標的治療に抵抗性を獲得する過程に関わる遺伝子を調べ、これまで知られていなかった薬剤抵抗性に関わる分子を発見している。これらの分子から薬剤抵抗性の黒色腫を治療できる新しい薬剤が開発される事を期待する。また、同じ方法でこれまで治療の困難であった細胞の増殖に必要な分子も簡単にわかるようになるだろう。CRISPRといいiPSといい、世紀が変わって、新しいハブが急速に発展している実感を持っている。


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