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12月22日 スタチンがガンの増殖を抑えるわけ(1月27日Cell掲載予定論文)

2018年12月22日
高脂血症に用いられるスタチンがガンの増殖を抑える場合があることが報告されてきたが、その詳しいメカニズムについてはよくわかっていなかった。今日紹介するコロンビア大学とスローンケッタリング癌研究所からの論文は、この疑問を詳しく解析した論文で来年1月27日のCellに掲載予定の論文だ。タイトルは「p53 Represses the Mevalonate Pathway to Mediate Tumor Suppression (p53 はメバロン酸合成経路を抑制して腫瘍の増殖抑制に関わる)」。

このグループはスタチンの標的メバロン酸合成経路がp53が変異したガンで上昇していることを見出していた。すなわち、p53のガン増殖抑制効果はステロールの合成を抑制することも貢献している可能性がある。そこでまず ガン細胞株を用いてp53を活性化すると、期待通りガン細胞のメバロン酸合成経路に関わる15種類の酵素が抑制されることを明らかにする。また、ガンのデータベースを調べ、p53の欠損したガンではメバロン酸合成に関わる遺伝子発現が上昇していることを明らかにする。

次にp53がメバロン酸合成経路遺伝子を活性化するメカニズムを追求し、p53によってSREBP-2分子の成熟が抑制され、この結果この分子のプロモーターへの結合が抑えられることを明らかになった。これまでの研究でSREBP2の成熟がABCA1と呼ばれる分子によって調節を受けている事が知られているので、次にp53がABCA1の転写に関わるかどうかを調べ、p53の活性化により直接ABCA1の発現が調節を受けていることを明らかにした。

以上の結果から、p53はABCA1の転写を高め、ステロールが低下に対するSREBP1の成熟を抑え、メバロン酸合成過程の分子の発現を抑えていることがわかった。逆に言うと、p53が変異したガンでは、この経路が働かず、その結果ステロールが低下する環境では速やかにメバロン酸合成が始まりガンに兵糧を送っていることがわかった。

最後に、p53変異により上昇しているメバロン酸合成をスタチンで止めることで、ガンの増殖を抑えられるか肝臓ガン細胞移植モデルで調べ、アトロバスタチン投与でガンの増殖を半分程度に抑えられること、またABCA1遺伝子の転写を抑えることで、様々なガンの増殖を抑えることができることを明らかにしている。

以上、スタチンがガンの増殖をおさえるメカニズムの一端を納得することができた。もちろん効果は根治的ではないが、P53の機能欠損した肝臓癌では、スタチン投与は病気を安全に抑える薬剤として使えるのではと思う。さらにこの研究では、コレステロールの小胞体輸送に関わるトランスポーターABCA1が癌治療の標的になる可能性も示している。実際ABCA1の機能抑制化合物も知られており、今後治療が難しくなった肝臓癌などで利用されるのではと期待している。

いずれにせよ、ガンを兵糧攻めにする様々なルートが明らかになり、対症療法であっても、安全な治療法が出来上がることは素晴らしい。

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