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3月14日 CAR-TでSLEを治療する可能性:(3月6日号Science Translational Medicine掲載論文)

2019年3月14日

ついにわが国でもCD19陽性の白血病に対するCAR-T治療が認可された。日本へ導入される過程で、不思議な縁があったため、感慨も深い。また、川真田センター長が見事に運営している神戸先端医療財団のCell Processing Centerが日本でのCAR-T供給基地になったことを聞いて、現役の頃神戸市と準備に奔走したことも思い出され、さらに感慨が深まっている。もちろん、CAR-Tの治療効果を示した治験論文が出た時の驚きがこれらすべての思い出の中心にある。

CAR-Tの魅力は、がんに対する免疫の最初から最後まで、極めて単純な戦略で全てカバーできている点だ。CD19を発現しておれば全てのガンはもれなく殺すことができる。逆に、この治療の最大の問題点は、CD19がガン細胞だけでなく正常B細胞にも発現しているため、ガンとともに正常B細胞も体から消えてしまう点だ。個人的には、この副作用を見て、この治療がガンを根治させることを実感したぐらいだ。

今日紹介するテネシー大学微生物教室からの論文は、ガン治療では副作用と考えられるCD19陽性B細胞除去能力を、なんと全身性の自己免疫病SLEの治療に使えないかしらべた全臨床研究で、なるほど同じ治療が最も論理的なSLE治療につながる可能性がよくわかった。タイトルは「Sustained B cell depletion by CD19-targeted CAR T cells is a highly effective treatment for murine lupus(CD19を標的とするCAR-T細胞による持続的B細胞除去はマウスSLEモデルの治療に極めて有効)」だ。

現在、CD20に対する抗体治療が一部の白血病と自己免疫病の治療に使われているが、SLEには効果が出にくいことが知られていた。そこで研究は、SLEのモデルとしてNZWマウス、あるいはMRLマウスを用い、抗体の代わりに、CD19を標的とするCAR-TでこのマウスのCD19細胞を除去して病気が治るかを調べた前臨床研究だ。白血病治療に大成功を収めているのだから、すぐに臨床研究に行っても良さそうだが、CAR-Tでは自己のT細胞を用いることから、SLEのような慢性疾患のT細胞が本当に機能するかどうかを確かめることが、この研究の最初の目的になる。

案ずるより産むが易しで、NZBマウスもMRLマウスも、CAR-T注入で見事にB細胞は完全に消失する。これに合わせて、抗DNAは11週からほぼ完璧に抑えることができる。ただ、面白いのは血清中の免疫グロブリン濃度は確かに低下しているが、それでもCAR-T治療18週目でも残存している。

そして何よりも、マウスの生存曲線を見ると、どちらのモデルでも大体6−7割のマウスが長期生存することが可能になっている。また、症状面でも尿にタンパク質は全く検出されなくなり、脾臓肥大が治り、腎臓や皮膚の病理像が大幅に改善する。すなわち、自己免疫が起こっているマウスのT細胞でもCAR-Tとして使うことができ、SLEの症状を長期間抑えることができることが明らかになった。

この研究では、B 細胞を除去できたのになぜ`免疫グロブリンが残存するのか調べる目的で、CAR―T投与による他の細胞や分子マーカーへの影響を調べている。すると、どの組織でもB細胞はほとんど検出できないのに、不思議なことに記憶T細胞の割合が大きく上昇していることを見出している。ただ残念ながら、なぜこれが起こるのかは説明されていないように思う。

話は以上で、自己免疫疾患なら、免疫系を潰せば病気は治せるという、極めて当たり前のことを粛々とやって見せたのが全てだ。このデータを見れば、おそらく人間でもすぐに治験に入れると思う。とはいえ、効果が分かっているとはいえ、B細胞は骨髄中で作り続けられ、そのB細胞をCAR-Tが殺し続けるというサイクルが体に組み込まれてもいいと踏ん切るのは簡単ではないような気がするが、それは病気の苦しみがわかっていない人間のたわごとかもしれない。


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