ゲノムに基づく系統樹から、真核生物はおよそ12−18億年前に発生したと考えられる。生命誕生から現在までのほぼ7割の時間が真核生物誕生にかかったと言うことは、様々な新しい性質が独自に進化した性質が揃うまでにそれだけの時間がかかることを示している。しかし、形態学的にも真核生物であることがはっきりしているのは10億年以降で、16億−10億年前の地層から発見される化石生物は、真核生物か、原核生物かはっきりしない。
今日紹介するオーストラリア国立大学とブレーメン大学からの共同論文は、コレステロールなど真核生物の膜成分に欠かせないステロールに注目し、16億年以降の地層を調べ、現存の真核生物には見られないタイプのプロトステロールが検出できることを示し、これが既に絶滅した真核生物の遺産である可能性を示した研究で、6月7日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Lost world of complex life and the late rise of the eukaryotic crown(複雑な生物の失われた世界と真核生物クラウングループの勃興)」だ。
古生物学の研究からは学ぶことが多い。地上のステロールのほぼ全ては生物由来と考えられるが、他の有機物と違い経年変化が少ないらしい。しかし、細胞膜が様々な環境に耐えられるために存在すると思うと納得する。
実際、10億年以降の地層では、まずコレステロールタイプのステロールが発見される。そして6億年以降はコレステロイド、エルゴステロイド、スティグマステロイドの全てが発見されるようになる。
しかし10億年まではステロイドは存在しない、すなわち真核生物は存在しないのか?オーストラリア北部の16億年前の地層を調べると、コレステロールができる前のプロトステロイドと呼ばれるステロイドが何種類も見つかることを発見する。
他にも、米国や中国の10−14億年前の地層でもプロトステロイドを検出する事ができる事がわかった。
以上のことから、ゲノムから計算されるように16億年前後にすでに複雑な真核生物が発生し、多くがステロール合成系を備えてちょうど上昇する酸素環境に伴う大きな変化に適応していたが、そのほとんどは絶滅し、8億年前後にコレステロール合成系を獲得した種が、その後の真核生物の起源となったというシナリオを提出している。
もちろん、今回検出されたステロイドが原核生物由来である可能性は排除できない。今後、さらに他の真核生物の特徴を探し出して、化石に残る生物群を調べる必要がある。
このように生命誕生からの30億年についての研究は、着目点が全く異なっていることから本当に面白い。
ゲノムから計算されるように16億年前後にすでに複雑な真核生物が発生し、多くがステロール合成系を備えてちょうど上昇する酸素環境に伴う大きな変化に適応していた.
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生命誕生は、地球上で一度だけ起こった奇跡なのか?
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