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1月10日:MLL白血病の新しい発症機序(1月14日発行予定Cell掲載論文)

2017年1月10日
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   ガンの個性に合わせて治療を行うプレシジョンメディシンの先駆けは小児白血病と言えるかもしれない。多くの白血病が特定の遺伝子の染色体転座と対応付けられているため、最初から遺伝子診断が病気の確定に用いられる。さらに、白血病細胞の残存について比較的正確に評価できる。このおかげで、小児白血病の治療成績は飛躍的に向上し、治る病気になってきている。しかし、染色体転座による遺伝子診断がはっきりしても治療の難しいのがMLL遺伝子に様々な遺伝子が転座してキメラタンパク質が作られることによるMLL(mixed lineage leukemia)だ。
   MLL分子はクロマチン構造をオン型に変換するH3ヒストンのK4メチル化に関わり、血液の発生に必須の遺伝子だ。白血病発症については、転座によりMLLが活性化され、ガン化に関わる様々な分子の発現が高まるためだと考えられている。
   今日紹介する米国ノースウェスタン大学からの論文は、転座MLL遺伝子による白血病にはMLLキメラ分子による転写異常の誘導に加えて、もう片方の染色体の正常MLL分子の分解が高まることも、ガンの悪性化に関わることを示した研究で、1月14日号発行予定のCellに掲載予定だ。タイトルは「Therapeutic targeting of MLL degradation pathways in MLL-rearranged leukemia(MLL転座による白血病に見られるMLL 分子の分解は治療標的になる)」だ。
   この研究では転座MLLと正常MLLの関係を調べるため、抗体をはじめとする様々な道具を準備してから、白血病細胞内のMLLの状態を調べ、MLLがE20により強くユビキチン化され分解されていることを見出す。
   このE20上昇の原因を調べるため遺伝子ノックダウンによる大規模スクリーニングを行い、IL1受容体を介するシグナルがE20のMLLへの結合を高めてMLLを分解することを突き止める。この結果、より転座MLLがクロマチンと結合を高め白血病化が促進すると結論する。これまで正常MLLは白血病に関わらないのではと考えられており、まったく新しい可能性が生まれた。
  この可能性を調べるため、IL1受容体の下流に位置するIRAK分子阻害剤で白血病を処理すると、正常MLL分子が安定化することで転座MLLのクロマチンへの結合を阻害し、白血病に関わると考えられているHOX9A, MEISをはじめとする様々な遺伝子の転写を低下させ、結果白血病細胞の増殖が低下することを明らかにした。また、白血病発症モデルでもIRAK阻害剤が発症を抑えることを示している。
   正常MLLは何もしないだろうという先入観を捨て、MLL分子の状態を生化学的に調べてみて初めてわかった新しいメカニズムで、MLL白血病治療の切り札とは言えないものの、手持ちの札が増える可能性は高い。期待したい。

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