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3月6日:副作用のない痛み止めを設計する(3月3日Science掲載論文)

2017年3月6日
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   痛みをどう止めるかは、現在なお医学の重要な課題だ。この時、痛みを抑えてくれるオピオイドは切り札になるが、オピオイド受容体刺激は、鎮静作用とともに、呼吸抑制、吐き気、便秘などの重大な副作用を示し、さらに精神作用に由来する中毒という重大な副作用があった。
   今日紹介するベルリン・シャリテ病院麻酔科からの論文は炎症組織にある末梢神経のオピオイド受容体だけを標的にしたオピオイド受容体刺激剤の開発研究で3月3日号のScienceに掲載された。タイトルは「A nontoxic pain killer designed by modeling of pathologyical receptor conformations(病的な受容体構造モデルからデザインした副作用のない痛み止め)」だ。
   私たちの組織はだいたいpH7.4の中性領域に保たれている。ところが、炎症が起こったり、組織障害が進むと、組織は酸性に偏る。このグループは、モルフィン受容体の構造解析と、その刺激剤フェンタニルの結合を様々なpHで解析し、フェンタニルは広いpH領域で受容体に結合できるため、炎症組織で痛みを鎮静するとともに、正常組織で副作用が出ることを確認している。
   この解析を基盤に、酸性組織でのみ働く刺激剤をデザインし、フェンタニルを出発点に主にフッ素を添加する手法でNFEPPと呼ばれる化合物を合成している。
   あとは試験管内で、NFEPPがpH6.5ではオピオイド受容体を刺激し、pH7.4では活性が低下することを確認し、ラットを用いた動物実験へ移っている。
   動物実験は片足に強い炎症を誘導したり、切開して痛みを誘導する実験で、NFEPPが痛みのある組織でだけ鎮痛作用があり、正常組織には何の影響もないこと、また大量に投与しても呼吸抑制や便秘などの副作用が起こらないことを確認している。
   この結果がそのまま人間にも適用できるのか、これから治験が必要だろう。また、がんの痛み抑制のように、麻薬の脳内での作用を期待するケースについては使えないだろう。しかし、外傷、炎症による局所痛は医療上の最大の課題で、患者さんの生活の質を大きく損なう。その意味で、アスピリンを開発したドイツから生まれた鎮痛剤に期待している。

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