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医療現場の窮状がわかる悲しい2論文

2020年4月30日

どこの国でも、一つの病気で1ヶ月に1万人近い死者がでれば、医療現場は対応しきれない。それでも救える命なら一人でも救おうと世界中で医療従事者たちは奮闘している。この様子は多くのメディアにより報道されているが、この窮状は専門の医学誌に投稿された論文からも伺える。

今日紹介する2報の論文は、胸が詰まるほど悲しい論文で、covid-19感染大爆発が起こったイタリアと米国からの論文だ。いずれもOpen Accessで多くの医師と情報を共有するために書かれた論文だ。

最初はボローニャの大学病院から胸部疾患の専門誌Thoraxに発表された論文で、一台の人工呼吸器を二人の患者さんに同時に使うための方法を説明している。

よく読んでみると、このアイデアはSARS流行時に提案され、動物実験で可能であることも確かめられている。また、イタリアだけでなく、米国の病院でもすでに実施されており、マニュアルについてはウェッブでも公開されている。ただ、Thoraxのような専門誌に正式に発表されたのはこれが初めてだろう。

実際には二人の患者さんを1台のベンチレーターにつなぎ、様々な条件を調べて、同じ体格など対象を選べば、十分可能な方法であることを示している。とはいえ、医学的にはこれは決して標準ではなく、一種の苦渋の選択であることも強調しており、辛い選択は続いているのだろう。何れにせよ、イタリアだけでなく多くの病院で同じ治療が行われており、今後結果が集められ報告されるように思う。

個人的印象だが、このようなデータを集めて、例えば4人の患者さんに同時に使えるベンチレーターは現代の技術で開発できる気がする。

もう一報も資材不足に医療現場がどう対応すればいいのかについての論文で、アメリカ外科学会の雑誌にワシントン大学から報告された。

内容だが、高性能医療用N95マスクを病院全体で回収し、過酸化水素蒸気でウイルスを除去する再生サイクルをどう設計すればいいのかについて詳しく述べており、情報共有として論文発表をしている。

いずれの論文も、先進国の医療体制の脆弱性を物語る悲しい論文だが、この状況を自ら改善しようと医師たちが不断に努力していることもよく分かる、励まされる論文でもあった。


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