AASJホームページ > 新着情報 > 生命科学をわかりやすく > 新型コロナ感染の将来予測モデル:占いを超えられるか (7月23日号 The New England Journal of Medicine 掲載論文)

新型コロナ感染の将来予測モデル:占いを超えられるか (7月23日号 The New England Journal of Medicine 掲載論文)

2020年7月30日

古今東西、人間は重大な決断に当たって占いや予言を大事にしてきた。卑弥呼からラスプーチンまで、占い師の予言が政治を左右した事例は枚挙にいとまがない。しかし、真面目に考えれば予言がそうそう的中するはずはないから、不確かな予言で行えた政治の方が、いい加減だったと思う(今でも予言や占いを信じる人は多く、異論も多いと思うが)。

なぜこんな話から始めるかというと、新型コロナ感染の拡大に対する政府・市民(メディア)と科学者たち(専門家委員会に限らず全ての)の議論を見ていると、「第2波です」とか「10万人の死者が出ます」とか、「すぐ収束します」などと語る科学者は、かっての占い師のようにとらえられているのではとフッと感じてしまったからだ。

一度収束したかに見えた新型コロナ感染者数が、日本中で再びジワジワと拡大し始めた今、誰もが明日、来週、来月、そして来年の予測を心待ちにしていることは間違いない。もちろん現代の予測は、占い師の時代とは違う。科学者による科学的データに基づいた予測が期待されている。しかし、的中したのか、間違っていたのか、今も確信が持てずにフラストレーションだけが残る西浦さんの「放置すれば40万人死亡」仮説が唯一のモデルとして示され、大きなリセッションを経験したわが国は、当時を超える感染者数が出ても、どの予言を信じればいいのか途方に暮れているように思う。

この感覚は決して一般の人だけではない。かく言う私も、流布している科学者の御宣託が、現状では根拠のない予言と変わることがないと感じていても、それを明確に指摘できないというフラストレーションを感じていた。

ところが、The New England Journal of Medicine 383; 4(2020)に掲載された論説を読んで、感染モデルについて頭の整理がつき、フラストレーションは解消されたので、私と同じように感染モデルにフラストレーションを感じておられる皆さんにぜひ紹介することにした。

タイトルには、感染モデルは「何か間違っているぞ」と感じつつ、「利用せざるを得ない」という我々の気持ちが表現されており、著者には私たちのフラストレーションがわかっていると期待できる。

事実期待通りで、まず感染モデルは、1)統計的予測モデル、2)メカニズムベースのモデルの2種類に分けてうまく説明してくれている。

統計予測モデルはこれまでのデータを、新しいデータに当てはめ、未来を予測する手法で、例えばIHMEモデルでは、中国やイタリアの統計を、例えば日本にあてはめることに相当し、統計に現れる実際の感染過程については情報として含まれていないため、長期の予想は全く不可能であると断じている。NYではこうだから日本も同じになるという予想は今も記憶に新しいし、西浦さんのモデルもこの範疇といっていいだろう。

一方、メカニズムに基づくモデルとは、ウイルスの性質、感染性、抵抗力、社会的接触度、など出来る限り多くの要素データを集め、そこから予測する方法で、パラメータがうまく集まれば、長期の予測も可能になる。例えば、全ての人に抵抗力があることが証明できれば、ウイルス感染は拡大しようがないといった具合だ。ただ我が国の場合、現時点でわからないことが多すぎる。そもそも、このウイルスについての様々なパラメータはほとんど明らかでないし、無症状感染者の行動履歴といった行動学的パラメータもほとんど集まっていない。

この論説では、メカニズムに基づく予測が可能になるための最低条件として、

  • 新型コロナウイルスに対する免疫反応の正確な理解と、免疫状態の正確な測定。
  • 無症状感染者の感染性、免疫状態の把握。
  • 感染者、非感染者の行動記録に基づく接触のデータの取得。

を挙げている。

この論説を私なりに解釈すると、

  • 統計による予測モデルは、例えば「経済と感染防御の両立」といった長期計画には向いていない事。
  • 長期予測のためには、感染者数だけでなく、ウイルス伝搬に関わる多くのパラメータを集めるメカニズムに基づく予測手法が必須であること。
  • ただ、メカニズムに基づく予測のためには、まだまだデータが集まっていない事。

と理解した。

ただこれでは予測モデルを信頼するなといっていることに等しいので、この論説では予測モデルを受けとる側が以下の質問を問い続けることで、予測モデルが「useful」になるとまとめている。その5つの問いとは;

  • モデルの目的と、予測可能な時間レンジは明確か?
  • モデルが寄って立つ仮定は正確に示されているか?
  • モデルの不確実性要素を正確に把握して、提示できているか?
  • 統計モデルの場合、どのデータをモデルに使ったのか?
  • モデルは普遍的か、あるいは特定の対象を設定しているのか?(例えば都市と農村)

以上、この論説を上手く紹介できたかどうか自信はないが、私はこ今後どのように感染モデルと接していけばいいか頭の整理がついた。是非みなさんも自分で読んでみられればと思う。

翻って我が国の状況を考えると、メカニズムを取り入れた長期予想がもとめられているが、これを可能にするには、あまりにも利用できるパラメータが存在しないと言えるように思う。論文を読んでいるとわかるが、この点に関しては先進国とは言えない状況だ。とすると、当分我が国では、他の統計をそのまま並行移動して利用するか(西浦型)、限られたデータをもとに「エイ!」と占うかしか方法はない。この状況を超えるには、本当の科学的データ収集が必要になるが、PCRの検査数がまだ議論の焦点になっている我が国でいつこれが実現するのか?心は晴れない。


  1. Yoshikazu Seno より:

    其のように思います。
    人(ウイルス保菌)の活発な生産行動が、ウイルス感染者を増加させた、発生源から交通網の媒体を通し世界に拡散させた事実は、正しい事実認識と思います、
    最初に確認された機関は、速やかに世界に公表すべきことでした。
    →拡散後のコロナ人災対策は、その後の経過の通りです。
    →拡散予測モデルは、経済活躍中の人の生活行動モデル化
     で、種別分類出来ると思います、
    →種別分類は、集合理論ではいかがでしょうか
    →数式モデルは、行列式で表現出来ないかと思います。
    →解析は、多変量解析ですか?
    ※私は、脳力がありません、思考の組立てが出来ません。
    はやい話し、頭が悪いのです

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*