ラクビーはボデイーコンタクトが激しいスポーツで、時に脊髄損傷が起こることすらある。しかし、サッカーと比べても頭への繰り返すショックはあまり強くないようで、慢性外傷性脳症(CTE)の頻度は低いと思う。そしてあらゆるスポーツの中でアメリカンフットボールは、CTEになるリスクが高く、2年前にはプロ選手の9割以上が何らかのCTEに悩まされていることが発表された。当然対策が必要だが、この確定診断は病理検査になるので、生存中にCTEを確定するマーカーが求められていた。
最近になってPETでTauの沈殿が検出できるようになり、CTEではアルツハイマー病などと同じようにTauタンパク質の沈殿が起こっていることが示唆され、今日紹介するボストン大学からの論文は、これを確かめる目的で26人のCTE症状を示す元フットボール選手を対象に、PETによりTauタンパク質の沈殿について調べた研究で、4月11日のThe New England Journal of Medicineに掲載した。タイトルは「Tau Positron-Emission Tomography in Former National Football League Players (元NFLフットボール選手のTau PET)」だ。
この研究では、26人の症状を示す元NFL選手と31人の対照をリクルートし、沈殿型のTauに結合するFlortaucipirと、βアミロイドに結合するFlorbetapirを用いたPET検査で調べている。
結果は予想通りで、元NFL選手では両側上前頭回、両側側頭葉内側部、および頭頂部に、対照群と比べ著しい蓄積が見られるが、βアミロイドタンパク質は対照群と比べて差が無かったという結果だ。さらに、フットボール選手を続けた長さと、PETで測定されるTauの蓄積は上昇しているが、症状の強さとTauの蓄積はあまりそう感がなかった。
以上、Tauの沈殿場所、βアミロイド沈殿が見られないことから、CTEがアルツハイマー病と関係しているというのははっきりと否定できるが、TauがCTEの神経変性にも関わっている可能性が示唆された。しかし、症状とTauの蓄積が創刊しないので、直接の神経変性の引き金かどうかははっきりしない。一方、プレーヤー生活の時間とTauは相関しているので、今後脳へのショックの繰り返しがなぜTauの沈殿につながるのか調べる必要があるだろう。また、PETの結果と病理との相関についての研究も必要だと思う。
どんなスポーツでも、プロになるということは文字通り体を担保にして初めて成り立つ厳しいことであることが理解できる論文だったと思う。
PETでTauの沈殿が検出できるようになり、CTEではアルツハイマー病などと同じようにTauタンパク質の沈殿が起こっている。
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イメージング技術の進歩だと思います。PETも進化しているようです。