安倍首相がモザンビークを訪問し700億円のODA提供を申し出た事が今朝の新聞に出ている。豊富な埋蔵量の石炭や天然ガスの開発を支援すると言う我が国に取っても戦略的な提案なのだろう。テレビで見る首相は喜色満面だ。しかし、モザンビークは1994年まで15年の内線を経験し、アフリカ大陸のほとんどの動物が暮らす豊かな国立公園が完全が破壊された事を知っているのだろうか。これに対し、アメリカの実業家グレッグ・カーは私財を提供し国立公園の復活に着手し、徐々に成果が出はじめている(ナショナルジオグラフィック日本版2013年6月号)。もし外務省が今回の訪問にあたってこのことを認識し一定の額を国立公園の復活に提供していたら、安倍首相の国際的評価は大きく変わっただろう。今の日本の政府にそこまでの構想を期待するのは無理なのかもしれないが、科学の知識と言うのは外交にも使える。
これはともかくとして、事実世界中で大型肉食動物が減少し続けている。既に日本オオカミは絶滅したし、オーストラリアのタスマニアンデビルも疫病のための風前の灯である事が報じられている。今日紹介する1月10日にサイエンス誌に掲載された論文はそんな状況を動物毎に分析している。「Status and ecological effects of the worlds ;argest carmovpres (大型肉食層物の現状と生態学的影響)」がタイトルだ。総説であり、現在の問題を分析するのがこの論文の目的であるため、研究と言うものではない。実に77%の大型肉食動物が今も減り続けており、この原因の大半は人間の生活圏の拡大と、人間による攻撃で、気候変動などの貢献は少ないと言うことが述べられている。大事な点は、これらの動物が食物連鎖の頂点にいる事で、頂点が消滅する事で生態系も大きく変わることだ。実際、イエローストーン公園ではオオカミが戻ったことで、20年後に森にポプラの木が戻った事が例として示されている。この分野に興味のある人にとっては、100を超す文献が引用されているこの総説は貴重だろう。現状はわかるが、解決に着手する事すら難しいこういった問題にどう取り組むのか、21世紀の課題だ。特にアフリカの状況は深刻だろう。アフリカの野生動物問題は、アフリカの経済を発展させ、紛争をなくし、貧困を乗り越えることとセットである事ははっきりしている。ただ、経済的に安定し野生動物保護が意識されるようになった南アジアでも野生動物は減っているようだ。このように経済だけ問題ではない。しかし逆に経済の問題を取り上げた時、野生動物問題をセットとして挙げるぐらいの構想力がほしいと思った。
8割近い大型肉食哺乳動物種は減少し続けている(1月10日Science誌掲載総説)
2014年1月13日