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4月30日 全身性自己免疫病は皮膚変化が原因(4月18日号JCI Insight掲載論文)

2019年4月30日
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SLEを代表とする全身性の自己免疫病は女性に多い。私たちの頃は単純に男女の内分泌システムの違いがこの原因だとされてきた。しかし、性ホルモンが原因だとすると、なぜ思春期前、あるいは閉経後も女性に自己免疫病が多い状態が続くのかを説明できない。

この問題に対してVGLL3転写因子の男女での発現差が自己免疫病の発症頻度の差を決める可能性を示す論文がミシガン大学から4月18日号のJCI Insightに発表された。タイトルは「The female-biased factor VGLL3 drives cutaneous and systemic autoimmunity (VGLL3の女性優位の発現が皮膚と全身の自己免疫を駆動する)」だ。

タイトルにあるVGLL3はまだまだ機能が理解できているとは言えない転写に関わる分子で、脂肪細胞分化や、炎症に関わる可能性が最近指摘されるようになった。このグループは以前、VGLL3が女性の皮膚に男性の3倍程度発現している事を発見し、これが全身性の自己免疫病の原因になっているのではないかという可能性を指摘していた。

この研究では、この仮説を動物実験レベルで確かめるため、皮膚のケラチノサイトでVGLL3を過剰発現させた場合、全身性の自己免疫病が起こるか、トランスジェニックマウスを用いて調べている。この方法では、正常の5−50倍という高いVGLL3の皮膚での発現が誘導される。実験では雄マウスを用いており、これによりVGLL3の効果を性ホルモンとは切り離して検証できる。

結果は著者らの期待通りで、3ヶ月までにはケラチン層の肥厚を伴う強い皮膚炎症が誘導され、病理学的にも人のSLEとよく似ている。遺伝子発現で見ると、VGLL3過剰発現によりインターフェロンやケモカインなど多くの炎症性サイトカインが誘導され、これが炎症の引き金になっていることを示唆する。また、人間のSLE患者さんの皮膚での遺伝子発現と比べると、遺伝子発現プロファイルがよく似ていることが確認される。

次に皮膚に浸潤してくる細胞および、全身の免疫細胞状態を組織学、FACS、さらにCyTofと呼ばれる細胞内のタンパク質発現を単一細胞レベルで調べる方法を用いて調べ、皮膚病変はT細胞、B細胞、樹状細胞が浸潤する典型的SLE病変が起こり、おそらくこの結果として皮膚からのリンパ球を集めるリンパ節や脾臓での強いB細胞の増殖が起こっていることを示している。

この結果として、SLEの代表的な指標である抗DNA抗体をはじめとする自己抗体が上昇し、腎臓にも抗体の沈着が見られることを示している。

以上の結果は、VGLL3の発現が女性で高まるため、炎症性のサイトカインが慢性に分泌され、毎日壊されている皮膚の自己抗原が自己免疫を誘導、その結果B細胞全体の活性が高まるのがSLEではないかと示唆している。

実際には、この分子が皮膚で欠損した場合どうなるのか、自己免疫を誘導した後皮膚からこのトランスジーンを除いたらどうか、など鍵になる実験が欲しいところだが、これが本当なら全身性の自己免疫の治療や予防に向けた明確な戦略が一つ新たに生まれたことになる。

  1. Okazaki Yoshihisa より:

    VGLL3過剰発現→ケラチン層肥厚を伴う皮膚炎症誘導→皮膚自己抗原が自己免疫を誘導→B細胞全体の活性が高まる→SLE

    Imp
    SLEの原因のひとつ=VGLL3の可能性示唆。

    1. nishikawa より:

      免疫の引き金ではなく、あくまで女性の持つ強い傾向が形成されるということです。

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