糖尿病の最大の問題は高血糖に反応して起こってくる様々な血管病変で、代謝を通じて影響を受ける動脈硬化過程から、グルコースに対する急性の反応まで様々だ。特に後者に関してはほとんど論文を読んだ記憶がない。
今日紹介するカリフォルニア大学デービス校からの論文は、その意味で高血糖がなぜ血管平滑筋の緊張を誘導するのか、生化学的過程を丹念に解明した研究でJournal of Clinical Investigationオンライン版に掲載された。タイトルは「Adenylyl cyclase 5–generated cAMP controls cerebral vascular reactivity during diabetic hyperglycemia(アデニルシクラーゼ5によって合成されたサイクリックAMPが糖尿病時の脳内の血管の反応性をコントロールする)」だ。
この研究では血管平滑筋に焦点を絞って、まずフレッシュな平滑筋を用いて、一般に糖尿病や、私たちの生活サイクルで起こる範囲のグルコースの変化に反応しておこる筋緊張を測定するシステムを構築している。
このシステムで緊張を高める原因が平滑筋内でサイクリックAMPが高まることであることを確認した上で、グルコースに反応してcAMPを合成する酵素がAC5であることを遺伝子ノックアウトなどを用いて確認する。
そして、このcAMPの局所での上昇が、L-タイプのカルシウムチャンネルの活性を高め、こうして高まった細胞内カルシウムが平滑筋の緊張を高めることを、試験管内および実際のマウス脳内で確かめている。
以上の結果をこれまでの研究結果と合わせてブドウ糖の上昇で平滑筋が高まる過程をまとめると、
グルコースが高まると、細胞内で核酸の合成が高まり、それによりプリン作動性の受容体が活性化し、これがAC5アデニルシクラーゼの活性を高め、これによる合成されたcAMPがL-タイプカルシウムチャンネル活性を高めて、細胞内カルシウム濃度が上昇し、平滑筋が緊張しやすい状態が生まれるという結果だ。
久しぶりに古典的とも言っていいい論文を読むと、何か一つ勉強した気になる、いい日曜日の朝だ。
このような研究は自分が学生時代には先端研究でしたが、生命科学の変化は激しいようで古典なんですね。
やっと梅雨明けです