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8月13日 膵臓癌の予後を決める腫瘍組織内細菌叢 (8月8日号Cell 掲載論文)

2019年8月13日
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8月に入って雑誌Cellに、少なくとも私にとって面白い論文が多く掲載されていたので、昨日に引き続き連続で紹介しようと考えている。今日はガンと腸内細菌叢の話だ。慶応の本田さんたちの研究から、腸内細菌叢の中には感染免疫だけでなく、ガン免疫も高める細菌が存在することがわかっている。そのため、ガンに良い細菌層を探す研究が盛んに行われている。

これに対し、今日紹介するテキサス大学MDアンダーソンガン研究所の論文は、ガンの中でも最も厄介なすい臓ガン患者さんの術後の生存期間が腫瘍内の細菌叢と相関することを明らかにした研究で、8月8日号のCellに掲載された。タイトルは「Tumor Microbiome Diversity and Composition Influence Pancreatic Cancer Outcomes (腫瘍内の細菌叢の多様性と構成がすい臓ガンの予後に影響する)」だ。

この研究ではすい臓ガンの手術時に組織からDNAを抽出しその中に含まれるリボゾームRNAから、切除組織に存在する細菌叢を調べ、術後10年近く生存したグループと、1年半ほどでなくなったグループに分け、細菌叢の多様性や構成を調べている。ただ、生存カーブから言えることは、10年以上生存できたグループも15年目にはほぼ全員が死亡しており、すい臓ガンの厳しさを物語っている。

さて結果だが、術後長く生存できた組織内の細菌叢は、生存が短かった組織の細菌叢と明確に区別することができ、細菌の多様性が高いことがわかった。またそれぞれのグループに特徴的OUT、すなわち16Sリボゾーム解析から特定される菌でをリストすると、生存期間ではっきり種類が異なることも明らかになった。

そして、これらの細菌叢の違いと並行して、あきらかに腫瘍に対するキラーT 細胞の組織内濃度は上昇しており、ガンに対する免疫反応が細菌叢に影響されていることを示している。同じく、それぞれの細菌叢は代謝活性でも大きく違っている。

すい臓ガン組織の細菌叢の由来を調べるため、便の細菌叢と比べると、ガン組織内の細菌叢の25%は腸内細菌叢由来であることが確認でき、多くは腸内細菌叢から由来すると考えられる。

そこで、マウスにヒト腸内細菌叢を移植したあと、すい臓にガンを移植する実験を行い、腸内細菌叢がガン組織へ移行するか調べ、移植した人間の腸内細菌叢がガン組織で見つかることを確認する。

この結果を受けて、次にガンが進展した患者さん、長期間生存例、および健康人の腸内細菌叢を移植したマウスですい臓での腫瘍増殖を調べると、長期生存例の腸内細菌叢を受けたマウスで最も強く腫瘍の増殖が抑えられ、CD8キラーT細胞の浸潤が強く認められることを明らかにしている。

以上の結果はすい臓ガンの組織内には、腸内細菌叢を中心に細菌叢が侵入し、この細菌叢が多様で特定のOUTが存在する場合、ガン免疫反応を高め、長期生存を可能にするという結果だ。

もしこの話が本当なら、すい臓ガンの患者さんに腸内細菌叢の移植を行う日が来るのも早い気がする。

  1. okazaki yoshihisa より:

    1:膵臓ガンの組織内には腸内細菌叢を中心に細菌叢が侵入する。
    2:この侵入細菌叢が多様で特定のOUTが存在する場合、ガン免疫反応を高め、長期生存を可能にする。

    Imp:
    とうとう膵臓癌と腸内細菌叢関連の研究が出たんですね。
    細菌が引き金⇒CD8T細胞etc免疫系を活性化⇒抗腫瘍効果
    基本原理:Coley先生の先駆的業績を思い出しました。

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