以前、アメリカ小児科学会が選んだ、小児の命を救った7つの成果の中に、ワクチンやガン治療とともに、なんと幼児用チャイルドシートが選ばれていたのを知って、臨床医学が実際には広い分野に及んでいることを認識した(https://aasj.jp/news/watch/3336)。
健康に関していえば、栄養も多くの人を救うことができる重要な分野で、低開発国だけでなく、先進国でも子供の貧困による栄養障害は重要な問題になっている。もちろん、ビタミンやミネラルなどのマイクロニュートリエントは、現代の食生活でも不足する心配が常にあり、主に開発途上国でこの不足により毎年2百万人の子供が死亡していることから、この分野の研究は多くの人命を救う研究になることは間違いない。
今日紹介するマサチューセッツ工科大学からの論文はこのmicronutrientを安定に食品に添加できるカプセルの設計でScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「A heat-stable microparticle platform for oral micronutrient delivery (マイクロニュートリエントを経口投与するための熱に安定なミクロカプセルの基盤技術)」だ。
実際食糧援助という状況でマイクロニュートリエントを考えると、サプリメントではなく食材に添加して、調理するのが最も有効だ。しかし、異なる性質のビタミンやミネラルの活性を保ったまま調理することは難しい。
この研究の目的は、マイクロニュートリエントを保護して高温でも活性を維持できるマイクロ粒子の開発で、最終的にFDAが許可しているBMCと、ヒアルロン酸やジェラチンを組み合わせてマイクロニュートリエントを包むことで、酸性の環境でだけ壊れ、熱に安定な、マイクロニュートリエントを実現できることを示している。
実験では、11種類のビタミンやミネラルについて一つ一つ調べ、100度で加熱しても全くカプセルから流出せず、胃を通った時だけ分解して摂取できることを示している。
ただ、鉄についてはアイソトープを用いた摂取実験から、やはりBMCで包むと摂取量が37%に落ちる。そこで、少し工程を工夫して、何倍もの鉄を粒子に取り込ませるための技術も開発している。
結果はこれだけで、本当にこれが安価なマイクロニュートリエント作成につながり、多くの子どもの命を救えるのか確かめられたわけではない。ただこの論文を読んでいて、チャイルドシートと同じで、一般の食品メーカーでも、多くの命を守り、さらにScience Translational Medicineに掲載される論文が書けることを示している意味で、紹介することにした。
oral nutrient delivery system
Imp:
DDSの一種ですね。
マイクロニュートリエント以外のdeliveryにも使えそうです。