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12月12日 1型糖尿病とエンテロウイルス感染の関係を探る(Nature Medicine12月号掲載論文)

2019年12月12日

1型糖尿病の発症時期を調べると、寒い時期に多いという統計があり、また多くのウイルス感染防御に関わる遺伝子多型と1型糖尿病の関連が報告されていることから、1型糖尿病がウイルス感染により引き金がひかれる自己免疫病ではないかと疑われてきた。

実際マウスモデルとはいえエンテロウイルスの一つコクサッキーウイルスBで誘導する1型糖尿病をワクチンで防げるという論文がDiabetological(61:476, 2017)に発表され、注目を集めた。というのも、コクサッキーウイルスは膵臓ベータ細胞に感染することが知られており、自己免疫病の引き金になると考えられるからだ。

では人間でも同じことが言えるのだろうか?これを確かめるためには、実際にウイルス感染と膵臓ベータ細胞に対する自己免疫病との相関を丹念に調べる必要がある。

今日紹介する論文は、ウイルスをはじめ、1型糖尿病(T1D)に関わる外的要因を調べるために組織された国際コホート研究チームによる研究で、膵島に対する自己免疫反応や、さらに進んだ1型糖尿病の発症と、便に排出されるウイルスの相関を調べた調査研究で12月号のNature Medicineに掲載された。タイトルは「Prospective virome analyses in young children at increased genetic risk for type 1 diabetes (1型糖尿病の遺伝的リスクの高い児童の前向き網羅的ウイルス解析)」だ。

この研究は膵島に対する自己免疫反応、そしてそれが進展した1型糖尿病の発症を前向きに追跡するコホート研究だが、3ヶ月齢より毎月便のサンプルが採取され保存されている。こうして集めた膨大な数の便に存在する全DNAを解析し、その中に存在するウイルスDNAの種類をしらべることができる。このデータを、追跡期間自己免疫を発症した383人、T1Dを発症した112人、そして発症しなかったグループと比較している。

便に存在するウイルスの72%はバクテリアに感染するファージウイルスで、20%がヒトに感染するウイルスになる。一番多いのはアデノウイルス、ついでParechovirus、bocavirus、そして問題のエンテロウイルスB、エンテロウイルスAが続く。この中にコクサッキーウイルスが含まれる。

ではこれらのウイルス感染と膵島への自己免疫反応やT1Dとは相関するのか。膨大なデータなので、詳細を全て飛ばして結果だけをまとめると次のようになる。

  • ウイルス感染と自己免疫の相関を調べると、やはりエンテロウイルス感染が最も高い相関を示すが、アデノウイルスなどでも相関が見られる。
  • エンテロウイルスも長期間慢性的便に排出された場合に自己免疫発症リスクが高まる。
  • 自己免疫反応で相関が見られたエンテロウイルス感染も、T1D発症時に限ると相関がはっきりしなくなる。

以上の結果は、エンテロウイルス(コクサッキーウイルスを含む)が原因となる自己免疫反応はまちがいなく存在するが、オッズ比で高くても3倍で、またT1Dとの相関は強くないことから、ウイルス感染だけで説明できるT1Dの比率は高くないことを示している。

エンテロウイルスだけでなく、同じ受容体を使って細胞に侵入するアデノウイルスと自己免疫反応の相関が認められたことは、ベータ細胞に慢性の感染が起こることが自己免疫の引き金になることを示している。従って、頻度は高くなくとも、コクサッキーBウイルスなどに対するワクチン開発は、医学にとって重要な課題だと言える。

これほど大規模なコホート研究が行われたことに敬意を評したい。


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