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12月21日 直立原人は10万年前までジャワで生きていた(12月18日 Nature オンライン掲載論文)

2019年12月21日
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私たちが子供の頃、アジアの原人として習った北京原人やジャワ原人はすべてHomo erectus(直立原人)で、犬歯が消失し、男女の体格差が解消された最も人間らしい骨格が始まる最初だと言える。直立原人は200万年前に現れたと考えられるが、いつ滅んだのかは場所により異なり、例えば亜系統であるハイデルベルグ原人の存在は40万年ぐらいまでさかのぼれる。一方、アジアでの研究は遅れていた。

今日紹介するオーストラリアMacquarie大学と米国アイオワ大学を中心とする国際チームからの論文はすでに出土していた直立原人の精密な時代測定をおこない、約10万年まえまでジャワに直立原人が生きていたことを示す研究で12月18日号Natureにオンライン出版された。タイトルは「Last appearance of Homo erectus at Ngandong, Java, 117,000–108,000 years ago(ジャワNgandonの直立原人は117,000–108,000まで生きていた)」だ。

今回対象になった直立原人はソロ原人として戦前から知られている原人だが、時代測定に使える材料が乏しいため、その年代推定は研究者ごとにことなり、議論が続いていた。

方法の詳細はよく理解していないが、この研究では同じ場所を発掘し直し、一つの指標に頼るのではなく、地形や各地層、そして今回発掘した土壌や動物の骨などの年代測定を様々な方法で行なった後総合的に判断すると言う手法を用いて年代測定をおこなっている。この結果、以前ソロ原人が発掘された地層はおそらく11万7000年前から10万8000年前と推定している。

以上が結果で、研究としてはもっぱら地学の領域でよくわからないことも多いが、人類学的にみると、おそらくジャワで我々の先祖が直立原人と交雑した可能性はなさそうだ。しかし、デニソーワ人はどうかと言われると、十分可能性はあるような気がする。ただ、昨日紹介したNature News&Viewsで読者が選んだルソン原人など今後新しい骨格が発見されるとすると、まず基準になるのは直立原人で、その意味で今回の時代測定結果は、ルソン原人も十分可能性があることを物語ると思う。

いずれにせよ、時代測定は考古学で最も熱い分野で、まだまだ議論が続く可能性は高い。

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