最近の小児アレルギー研究の最大の成果は、アトピー性皮膚炎の多くが皮膚のバリアーの機能不全で起こることがわかり、生後油性の保湿成分を塗ってバリアー機能を回復させることが一般に行われ、アトピー性皮膚炎の発症が劇的に減ったことだろう。このように、小児期の免疫反応を変化させて将来のアレルギーマーチを防ぐことは重要な課題だ。
今日紹介するコペンハーゲン大学からの論文は生後18ヶ月目の末梢血で調べられる免疫機能を詳細に調べ、この結果と喘息の発症との相関を調べ、発達期に可能な予防手段を探すための研究で2月5日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Distinct immune phenotypes in infants developing asthma during childhood (小児期の喘息へ発展する幼児の免疫形質)」だ。
デンマークはコホート研究が極めて盛んな国だが、この研究は子供を追跡して、喘息が発生する条件を探るためのコホートで、2010年に始まっている。子どもの発達で18ヶ月目というのは、内外の環境の変化を受けてT細胞が成熟する時期で、この研究ではこの時の免疫機能を詳細に調べ、反応性で1−7までのタイプに分けている。検査も徹底しており、末梢血中の細胞の種類や量だけでなく、ウイルス、細菌感染などを想定して、自然免疫に関わるTLRを別々に刺激し、その時に出てくるサイトカインを調べる念の入れようだ。この何百にも及ぶ検査を、500人を超す子供で調べたということ自体おどろく。末梢血で調べられるほとんどの免疫機能検査を行ったといっていいだろう。
その結果まずわかったのは、子供たちの免疫機能を、TLR刺激によるサイトカインの分泌から7タイプに分けられることを明らかにしている。すなわち、ウイルス感染や、細菌感染などの印がこの検査に反映され、子供達の免疫システムの違いを生んでいるということがわかる。例えば、ウイルスなどの細胞内刺激に反応しやすい子供は、TLR7/8やTLR3に反応するし、一方バクテリアに反応しやすい子供はTLR4やNODに強く反応することになる。
ではこの18ヶ月目の免疫のサブタイプと喘息の発症は相関するのか?
この研究では小児期に一過性に起こる喘息と、発症後持続する喘息に分けて調べている。このコホートでは一過性、持続性を合わせてなんと16%が喘息を発症し、7%は持続性の喘息になっている。このように小児の喘息の頻度は極めて高い。
このなかで、TLR7/8に対する反応が異常で、特に好中球からの炎症性サイトカイン産生が高まっている子供は、一過性の喘息にはなるが、持続はしない。しかし、これにより強くT細胞の反応(TH2反応)によるIL-5やIL-13の産生亢進が合併すると、今度は持続性の喘息になることがわかった。
最後に、ではこのTH2反応と相関する出来事はあるかと調べると、喘息の発生しなかった子供と比べ1ヶ月までに気道感染症状が出た患者さんで喘息発症が高いことを明らかにしている。
データをよくみると、もちろん全ての喘息に当てはまるのではなく、相関があるというレベルの結果だが、しかし10%程度の子供の喘息発症を、気道感染を防ぐことで抑えることができるとすると、大きな数字だ。
要するにここまで様々な項目による分類が進むと、今後様々な免疫の発症につながるホストの条件もますます明らかになるように感じる。特に目新しい検査をしているわけではないが、徹底して行うことで新たなことが見えてくるという典型だと思う。
一過性の喘息にはなるが、持続はしない:
TLR7/8に対する反応が異常で、特に好中球からの炎症性サイトカイン産生が高まっている子供
持続性の喘息になる:
これにより強くT細胞の反応(TH2反応)によるIL-5やIL-13の産生亢進がある子供
Imp
ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体薬、なかなか評判よいみたいです。