数多くのサプリメントがアンチエージングをうたっているが、本当に健康寿命を伸ばせるのか調べようと思うと、かなり長期の科学的治験が必要になる。例えば、ワシントン大学今井さんの研究で有名なサーチュイン2を活性化するNADの前駆体NMNにしてもようやく治験が始まったばかりで、本当に副作用なく何十年も飲み続けられるのか?少なくとも私にとってわかった時にはもう手遅れだろう。
ただ、抗老化サプリによっては、その効果をもっと早く知る方法もある。例えば肺線維症や腎硬化症はメカニズムが老化とオーバラップする場合も多く、これに治療効果がある場合、老化にも効く可能性がある。この方向の研究として、非特異的キナーゼ阻害剤と、抗酸化サプリを併用して、死にかけの細胞を積極的に殺すsenolysis治療があるが、肺線維症や腎硬化症で効果をあげており、実際の老化にも効果があるのではと期待され始めている。
今日紹介するオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学からの論文はアンチエージングサプリとして期待されているNMNが卵子の若返りに貢献することを示し、ひょっとしたらNMSも期待が持てるかもと思わせる研究で2月18日号のCell Reportsに掲載された。タイトルは「NAD + Repletion Rescues Female Fertility during Reproductive Aging (NADを補充することで女性の生殖年齢を若返らせる)」だ。
研究はまず高齢マウスの卵子でNADが低下していることを確かめたあと、経口投与できるNAD前駆体NMNを飲み水に混ぜて飲ませると、NADレベルが回復することを確かめる。
あとはNADが回復した卵子の機能を様々な角度から確かめ、卵子の能力が若返っていることを発見している。ただ面白いのは、NMNを0.5g/lの濃度で飲ませる場合は著しい改善がみられるのに、4倍の濃度液を飲ませると、卵子の機能は逆に低下する。NADが様々な回路で働いていることの現れで、おそらくアンチエージングを考える時も注意が必要な点になる。
この結果はNADが多様な影響を持つことを示しているが、Sirtuin2のトランスジェニックマウスを用いて、卵子若返りの主役はやはりSirtuin2であることを示している。すなわち、NADはsirtuin2の脱アセチル化機能を活性化して働いていることを示している。
最後に生殖補助医療の状況を考え、老化卵子に試験管内で直接NMNを添加する実験を行い、試験管内でも同じようにNMNはSirtuin2を介して卵子の機能を若返らせることを明らかにしている。
以上、実験自体は他の細胞を用いたアンチエージング実験となんら変わることはないが、卵子という老化がはっきりと機能に現れる系でNADの効果が示せたこと、そして年齢が進んだカップルの卵子機能を高める臨床的可能性を開いた点で面白いと思う。
卵子という老化がはっきりと機能に現れる系でNADの効果が示せた
Imp:
老化は治療介入可能な疾患だった!?
にわかには理解できません。。。