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3月17日 新型コロナウイルス治療法開発についての展望(ACS(米国化学協会) Central Science オンライン掲載論文)

2020年3月17日

SARS,MERSに関する論文を紹介してきたが、今日紹介する米国化学学会が主導で専門家を集めて発表した総説は、新型コロナの治療法開発を展望するために、SARSやMERS も含めた開発研究の現状分析で、かなり新しい話まで網羅しており、役に立つ総説だと思う。タイトルは「Research and Development on Therapeutic Agents and Vaccines for COVID-19 and Related Human Coronavirus Diseases(Covid-19と関連するヒトコロナウイルス疾患に対する治療法とワクチンの研究開発状況)」だ。

現在新型コロナウイルス感染は拡大の一途を辿っており、ヨーロッパの状況を見るとその感染力の高さに目をみはるが、一方でこれを大きなチャンスと捉えて、ビジネスと割り切って行われる研究も急速に増えている。実際出版される論文の数は毎週大きく増加し、1月から現在まで500を超えた。最初は、ゲノム、臨床例についての報告が圧倒的に多いが、すでに紹介したように創薬につながる基礎研究も増えてきた。このスピードには圧倒されると同時に、将来への希望を感じる。

この総説はこれらの論文から明らかになったことを、公開特許出願との関連で紹介しているのが特徴で、治療手段を開発するためにはこのような目配りが必要になるのだろう。

化合物の探索。

ウイルスに対する根本的な治療は、抗ウイルス薬と免疫になる。抗ウイルス薬の標的としては、ウイルスタンパク質の成熟に必要なペプチダーゼ3CLpro と PLproに対する阻害剤で、SARS,MERSに対し開発されたLopinavirやritonavirがこれに相当し、新型コロナにも使われている。

 また、RNA依存性RNA ポリメラーゼ阻害剤としてレムデシビルやリパビリン、そして我が国で騒がれているアビガンもこれにあたる。新型コロナに対する治験結果も4月には出てくるだろう。

 もう一つ重要な標的は、ウイルスの感染経路だが、スパイクタンパク質とその受容体、ウイルス粒子の融合に関わるTMPRSS2などに対する薬剤がすでに存在する。これらについては表2にまとめられているので、そのまま掲載する。

他には、ホスト細胞側のリソゾームの状態を変化させるクロロキンなども治験が進んでいる。

驚くのは、すでに薬剤が開発できているこれらの標的に対する化合物特許が他にも数多く存在することで、例えばプロテアーゼなどは多くのウイルス共通に効果がある可能性があるため、2000を超す化合物が特定されている。

このような中から、薬剤として開発が進んでいる化合物も増加している。

この表を見ると、我が国もシオノギ、小野、そして京大萩原さんが創業したキノファーマなど、ちょっと斜めから攻めているユニークな薬剤開発が行われており、期待したい。

生物製剤

炎症や免疫系に対する薬剤や、ワクチンが含まれる。新型コロナにも適応されるパテントで見ると、ワクチンが363、抗体薬99、RNA薬35、そしてサイトカイン療法が22種類も存在する。

 驚くことに、SARSやMERSに対する抗体薬もすでに開発されており、ほとんどはスパイクに対する抗体だ。このうち新型コロナと交差反応するものはすぐにも使えるだろう。エボラの治験でも最も効果が見られたのは抗体薬だ。

これ以外にアクテムラなどの炎症性サイトカインを抑える抗体が、サイトカインストームを抑えるために治験されている。最近公開されたものでは炎症性ケモカインIP-10に結合する抗体薬なども注目されている。

  ウイルス自体はインターフェロンなど自然免疫で抑えることができるので、インターフェロンを中心に様々な治験が進んでいる。全部紹介するのは大変なので、掲載の表をカットアンドペーストしておく。

肝炎ウイルスなどに対して抑制性RNAが使われるようになってきた。この分野も期待が持てるし、一昨日動物実験でこの手法を使った治療実験を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/12590 )。また実際多様な方法が開発されているが、今回は割愛する。

ワクチン

反ワクチン主義者のトランプも、今回ばかりはワクチンの開発を心待ちにしていることと思う。ワクチンは当然ウイルス粒子そのもの、あるいは粒子を形成するタンパク質を抗原として使う。すでにSARS.MERSの準備があるため、ウイルス粒子を抗原とするワクチンでも、同じラインで作れる可能性が高い。もちろん安全性などから考えると、スパイクなど部分タンパク質を抗原にするワクチンが開発されており、GSKと中国のベンチャー企業のワクチンは治験に近い。

  抗ウイルス免疫にCD8T細胞が重要であることがわかっており、これは蛋白抗原では誘導できない。そのため、DNAワクチンやRNA ワクチンも開発が進んでいる。RNAについてはすでに米国で治験が始まっている。

  現在特許として現れるのは、SARS,MERSに対するワクチンだが、どのようなタイプのワクチン開発が進んでいるのか、特許から調べた図を再掲する。

例えば精製タンパク質を使うワクチンだけでも100以上のパテントが存在し、おそらくこれらは新型コロナとも重なるだろう。おそらく全世界の人が心待ちにしているワクチンは、想像を絶するビジネスチャンスと言っていい。もちろん、一発で全て解決というわけにはいかないと思うが、とりあえず重症者の数を減らして、最後は一発で全て解決というワクチンに置き換わればいい。

以上で紹介を終わるが、新しい治療法やワクチン開発の可能性が高いことがわかり、安心できるレポートだ。一方で、世界中が消費収縮におののいているとき、ここに大きな消費機会を求めて壮烈な競争が繰り広げられていることもよくわかった。


  1. okazaki yoshihisa より:

    世界を見渡すと、これだけの試みが行われているんですね。現代生命科学の実力を知るよい機会です。
    治療薬、ワクチンの早急なる開発をお祈りしております。

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