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3月13日:医療技術の進歩(3月号The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery)

2014年3月13日
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今日朝日新聞、毎日新聞で京都府立大学の木下さんの培養角膜内皮移植が報じられている。現役時代ディレクターを務めていた再生医学実現化プロジェクトからのうれしい成果だ。木下先生のプロジェクトと平行して、iPSを用いる内皮移植プロジェクトも支援したが、進展は遅いように思える。実現化プロジェクトでは角膜内皮細胞移植実用化と言う目的達成のためにiPSと培養角膜の間で競ってもらった。医療技術はどの細胞から始めるかが問題ではなく、患者さんに安全で安価な治療をどう届けるかが勝負だ。これからもこの勝負の行く末を見て行きたい。この報告の元になる論文を探したが、見つける事が出来なかった。まだ学会発表の段階なら、是非論文発表を急いで欲しい。再生医学実現化プロジェクトは論文発表がゴールではなく、基礎的技術を速やかに臨床研究へ進める事だが、臨床研究が進めば当然臨床論文として発表してもらう事は重要だ。   このように患者の視点から言えば、多様な技術が競争し合って安全・安価な技術へと発展する事が重要なのに、我が国では何故か切り札は何かと言った議論が先行して、多様な技術間の競争が遅れている観がある。例えば内視鏡手術などは機器と技術が同時に進む必要があり、医師と技術者の対話が重要だ。今日本の医療機器シェア低下が問題になっているが、軟性の内視鏡で高いシェアを持つオリンパスは別として、内視鏡手術等の器具ではJ&Jなどの国外企業のシェアは圧倒的だ。そんな一端を伺わせる論文が3月号のJournal of Thoracic and Cardiovascular Surgeryにでていた。タイトルは「First human totally endoscopic aortic valve replacement: An early report(大動脈弁の内視鏡下置換:早期報告)」だ。米国で開発されたニチノールと呼ばれる形状記憶合金を使うことで、縫合の必要のない小さく折り畳める人工弁を作る事が出来る。小さく折り畳める事で内視鏡手術で使う筒を通して弁を体内に入れ、手術を行う事が可能になる。もちろん人工心肺を使い、大動脈切開を行うのだが、開胸は必要ない。この研究では82歳、83歳の男性が選ばれ手術を受けている。最初の例と言う事で、大体2時間半位人工心肺につなぐ必要があるが、2例とも置換した弁は正常に機能し、7日で退院したと言う報告だ。もちろん医療として普及するまで、症例が重ねられ、長期経過の観察が必要だ。ただ、既に論文に書かれているように、新しい内視鏡手術を始める事で、工夫すべき点など新しい技術のアイデアが蓄積されて行く。このため普及後もずっとリードを保って行く事が可能でより安全な方法として圧倒的な強さを保って行くだろう。実を言うと私の連れ合いも大動脈弁閉鎖不全で、今は山歩きも普通に楽しんでいるが、いつか手術が必要になるのではと覚悟している。患者と家族の視点から見ると、他を圧倒する技術で負担のない手術を受けたいと思っており、この技術の発展を期待を持って見続けるつもりだ。内視鏡ではこれを行ったからこそ圧倒的シェアを我が国のメーカーが獲得している。医師と技術者の連携のあり方から見直す時が来ているのかもしれない。

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