AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 4月20日: 急性骨髄性白血病で起こる貧血はIL-6が原因(4月8日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

4月20日: 急性骨髄性白血病で起こる貧血はIL-6が原因(4月8日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2020年4月20日

新型コロナウイルスの重症化と相関するマーカーが明らかになり、新しい治療方針につながる可能性が生まれているが、例えばフィブリンの分解でできるD-ダイマーが重症例では著明に上昇しており、静脈血栓症が重症化に関わるのではと示唆されている。事実マサチューセッツ総合病院のマニュアルでは出血や腎不全がない限りヘパリンによる予防的抗血栓療法を推奨している(https://www.massgeneral.org/assets/MGH/pdf/news/coronavirus/guidance-from-mass-general-hematology.pdf)。

もう一つ直接治療につながる重症度と相関するバイオマーカーが血中IL-6の上昇で(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32301997/ )、 阪大の岸本先生たちが開発したIL-6に対する抗体で治療効果がみられた症例がわが国を含め蓄積しているようだ。ウイルス感染によるサイトカインストームが重症化の原因と考えると、この結果は納得できるが、様々なサイトカインが分泌されると考えられるのにIL-6を抑えるだけでも十分効果があることは重要だと思う。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文はサイトカインストームとIL-6を理解する上でも面白いと思った研究で、急性骨髄性白血病の貧血がIL-6により誘導される可能性を示唆している。タイトルは「IL-6 blockade reverses bone marrow failure induced by human acute myeloid leukemia (IL-6阻害はヒト急性骨髄性白血病により起こる造血不全を正常化できる)」で、4月8日号のScience Translational Medicineに掲載された。。

急性骨髄性白血病(AML)は、血液幹細胞の病気で、白血病細胞が増加した結果、重度の貧血が起こり、その結果起こってくる出血や感染症が直接の死因になる。このAMLによる貧血の原因については、造血に必要な場所を白血病が占拠するからだろうと単純に考えていた。

この研究ではこの常識を疑い、人間のAMLを免疫不全マウスに注射した時に起こる貧血の原因を探っていった。その結果、

  • ヒトのAMLで、骨髄中の白血病細胞の数と貧血との相関を見ると、ほとんど相関が見られない。したがって、造血の場が失われることが貧血の原因と単純に決められない。
  • AMLをマウスに移植する時、髄外造血の場である脾臓を摘出しておくと、骨髄造血を代償することができなくなる。この実験系でAMLを注射すると、骨髄正常造血が抑えられて、マウスは少数のAMLでも早期に死亡する。すなわち、AMLはマウスの骨髄造血を抑制し、それが死因で死亡する。
  • 試験管内でAMLは造血抑制を誘導する分子を分泌するが、中でもIL-6が造血抑制と強く相関する。
  • IL-6に対する抗体をAML移植マウスに注射すると生存期間が倍加する。

以上が結果で、IL-6に対する抗体だけではマウスを治癒することはできないが、骨髄抑制を正常化して貧血を直せるという結果だ。これは、AMLの病態の一部をサイトカインストームで説明できる可能性を示唆している。確かに、急速に進む白血病ではサイトカインストームと同じ症状が見られることがある。もちろん白血病では感染など他にもサイトカインストームの原因は存在すると思うが、IL-6抗体治療は納得できる選択肢ではないかと思う。


  1. HepD より:

    IL-6を介した網内系ブロックによる貧血は悪性腫瘍一般に見られる公知の事実だと思っていたのですが、新規性はどこにあるのですか?

    1. nishikawa より:

      コメントありがとうございます。AML細胞がIL-6を出している可能性は十分考えられるはずですね。

  2. okazaki yoshihisa より:

    ヒトAML患者で、骨髄AML細胞数と貧血の程度に相関がないことを発見する。
    ⇒髄外造血の場である脾臓を摘出し骨髄造血を代償することができなくしたマウス
    ⇒AML細胞を移植
    ⇒AMLはマウスの骨髄造血を抑制し、それが死因で死亡する。
    ⇒in vitro実験で責任分子を探索し、IL6を突き止める
    ⇒抗IL6分子でモデルマウスの生存期間の延長に成功した。
    Imp:
    奇跡の分子=IL6
    生体内サイトカインネットワークの“ハブ”分子の可能性が増々高まりました。
    生体内分子の“ネットワーク理論”のようなものが構築できれば、“ハブ”を薬で操作し、人体を思いのままに操れるようになれるかも!?
    今回のコロナ騒動で、”ネットワーク理論”にも注目しています。

  3. 吉田尚弘 より:

    AMLの増血抑制までもIL-6でしたか。原因不明の貧血の方でもIL-6に関連する炎症分子を調べてみたら、わずかな活性化とかあるのかもしれませんね。慢性感染での貧血などにはいかにも噛んでいそうですが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*