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3月20日二次進行期多発性硬化症に対するスタチンの効果(3月19日号The Lancet掲載論文)

2014年3月20日
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多発性硬化症の薬剤についてはフィンゴリモド(8月28日)や、まだ動物段階ではあるがベンズトロピン(10月10日)などを紹介して来た。ただこれらの薬剤は炎症が繰り返す第一期の患者さんが対象で、二次進行期に入ると、有効な薬剤はまだ見つかっていない。今日紹介する論文はこの二次進行期の患者さんを対象にした臨床研究で、これまでコレステロールを下げるために普通に使われて来たスタチンがこのステージに一定の効果があるかもしれないと言う結果を報告している。論文は3月19日号のThe Lancetに掲載され、タイトルは「Effect of high-dose simvastatin on brain atrophy and disability in secondary progressive multiple sclerosis (MS-STAT): a randomized,placebo-controlled, phase2 trial.(二次進行期多発性硬化症の脳萎縮と障害に対する高用量シムバスタチンの効果)」だ。スタチンは最初当時三共製薬の研究所の遠藤章さん等により開発されたHMG-CoA還元酵素阻害剤で高コレステロール血症の治療薬として世界中で使われて来た薬剤だ。今回使われたシムバスタチンも遠藤さんが開発した薬剤とは構造は違うが同じ作用を持つ薬剤で日本ではリポバスとして知られている。これまで長く使われて来た薬剤であるため、他の用途にも迅速に使用が可能だ。この治験では、140人の患者さんを選んで、半分に偽薬、残りの70人にシムバスタチンを80mgと高用量で25ヶ月投与し、12ヶ月、25ヶ月で詳しく調べている。臨床試験としては無作為化した2重盲検で厳しい基準で研究を行っているが、あくまでも効果を見るパイロット実験と言う事で治療を受けた人数は少ない。薬剤の効果が最もはっきりしたのは、MRIによる脳画像で、シムバスタチンを服用する事で脳萎縮が対象に比べ50%近く遅らせる事が出来た。自覚、他覚症状も驚くほどではないが統計的に改善が見られるようだ。免疫機能など他の検査にはほとんど差を認めていないが、更に大規模で長期の治験を是非進めて欲しいと思わせる結果だ。無論脳画像だけで将来を判断する事は難しく、スタチンの作用を否定する結果も報告されている事を考えると、早く第三相の治験を進めて欲しいと感じる。

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