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5月23日 T細胞の細胞障害過程の細胞生物学からウイルスの構造が理解できる(5月22日号 Science 掲載論文)

2020年5月23日

キラーT細胞が細胞を殺すメカニズムとして、当時、順天堂大学医学部の真貝さん(現、理研)がパーフォリン遺伝子を報告したのはずいぶん前だが、この仕事はよく覚えている。その後グランザイム、そして長田さんが明らかにしたFasを刺激するFasLも相手を殺す時のメカニズムとして特定された。パーフォリントグラン財務に関しては、パーフォリンでできた穴を通して、グランザイムが細胞内に侵入し、細胞を殺すと理解している。また、両方の分子は小胞の中に詰め込まれて分泌されることも知られている。

今日紹介するオックスフォード大学からの論文はこの過程を細胞生物学的に詳しく解析し、パーフォリン・グランザイムが一種カプシド型ウイルスの様な構造を形成し相手の細胞へ受け渡されることを示した面白いプロの仕事で、5月22日号のScienceに掲載された。タイトルは「Supramolecular attack particles are autonomous killing entities released from cytotoxic T cells (超分子的攻撃粒子がキラーT細胞から遊離するキラー分子の実体)」だ。

このグループは、キラー分子が集められたカプシド型ウイルスの様な超分子攻撃粒子(SMAP)が細胞を殺すと仮説を立て、パーフォリンやグランザイムを蛍光ラベルするとともに、分子コンプレックスをラベルする目的でレクチンであるWGA分子もラベルし、これらがコンプレックスを作って、殺したい相手の細胞に受け渡されるかまず調べている。

実験は細胞生物学の粋を集めたもので、SMAPに分子が集められ、それが相手の細胞に移行する様子を見せるだけでなく、人工的にスライドグラスの上に形成させた脂肪二重膜の上でT細胞を活性化し、分泌されたSMAPが膜に突き刺さる様子もリアルタイムで捉えている。まさに、ウイルスの侵入を見ているようだ。

このようにパーフォリンや、グランザイムが単純に分泌されるのが細胞障害性でないとすると、SMAPを構成している分子が重要になる。そこでこの構造を集めて分子解析を行うと、様々な分子が集まった構造を取っており、中でも血小板で多く見られるスロンボスポンディン1が最も多く含まれることが明らかになった。そこでスロンボポイエチンをノックアウトしたT細胞を作り、キラー活性を調べると期待通り活性は低下していた。

あとは、クライオ電顕など画像解析を通して、SMAPがグランザイムやパーフォリンを中央に、その周りをスロンボスポンディンがカプシドのように取り囲む構造を持ち、111nmほどの大きさの粒子であることを明らかにしている。

結果は以上で、中に核酸はないが、カプシド型ウイルスの構造と同じだ。さらに考えると、キラーT細胞はFasLを表面に持った小胞体を分泌して、Fasを持った相手を殺すことも知られている。この場合、コロナのような一種のエンベロープ型ウイルスに近い。

勝手な想像だが、このような擬似ウイルス武器をもって、ウイルス感染を防いでくれるのがキラーT細胞であることがよくわかった。うまくいけば、キラーT細胞ではなく、他の方法でこの武器を使える日が来るかもしれない。


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