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9月11 日 ウイルスでウイルスを制す (9月4日 The Lancet Microbiome 掲載論文)

2020年9月11日
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マスメディアではこの冬は新型コロナウイルス感染と、インフルエンザ感染が入り乱れて恐ろしい話になるのではと恐怖が煽られている。ただ、ウイルスの同時流行についてはあまりデータがない(これが恐怖の元になる)。一方、一つのウイルスに感染すると、自然免疫が誘導されるために、他のウイルスには感染しづらくなる現象(ウイルス干渉と呼ばれる)については、多くの報告がある。実際に、新型コロナウイルスとインフルエンザや他のウイルスとの間でウイルス干渉が見られるのかは重要な問題で、鼻粘膜からのウイルスサンプル採取が行われる今年は、研究の大きなチャンスになると思う。どこかが主導して集められたサンプルについて、新型コロナやインフルエンザにとどまらず様々なウイルスについてPCRを行うことで、今後の予防対策にとって貴重なデータが得られることは間違いがない。

今日紹介するイェール大学からの論文は疫学レベル、試験管レベルで、普通の風邪の原因であるライノウイルスとインフルエンザウイルスが干渉するかどうか調べた研究で、The Lancet Microbiomeにオンライン掲載された。タイトルは「Interference between rhinovirus and influenza A virus: a clinical data analysis and experimental infection study (ライノウイルスのインフルエンザウイルスの干渉:臨床データと実験的感染研究)」だ。

イェール大学では2016年からウイルス干渉現象に取り組んでおり、インフルエンザウイルスとライノウイルスを含む10種類のウイルスについて感染の存在を確認し続けている。インフルエンザの抗原検査は行われても、ウイルスのPCR検査が臨床で行われることは稀なので、このデータは貴重だ。

結果だが、予想されたとはいえ極めて明確で、、ライノウイルスは年中続いているが、それでも1〜2月には感染者数は減る。そしてインフルエンザウイルスはこの間隙を狙うかの様にピークがくる。すなわちウイルス干渉現象が見られる。

ここのデータを詳しく見て、実際に一人の患者さんで複数のウイルス感染が見られるか調べると、複数のウイルスにかかることはあるが、理論値よりかなり低い。ライノウイルスと、インフルエンザAとの関係で見ると、理論値の1/5に抑えられている。

そこで今度はヒト培養気管上皮への感染実験を行い、ライノウイルスを感染させて3日後の気管上皮ではインフルエンザウイルスの増殖が抑えられていること、そして感染抑制がライノウイルス感染による自然免疫活性化と1型インターフェロン産生によることを示している。

結果はこれだけで、おそらくこれまでのウイルス干渉研究の再確認研究と言えるかもしれないが、新型コロナ感染が続く今、新鮮に感じる。もちろんライノウイルスは非エンベロープ型で、インフルエンザウイルスはエンベロープ型なので、両者に見られた関係が、インフルエンザと新型コロナで見られるのか、予想できない。また、新型コロナウイルスが持つ様々なインターフェロンを逃れる仕組みがウイルス干渉に抵抗力を持たせる可能性もある。

いずれにせよ、この問題を日本人で調べる最大のチャンスがこれから冬にかけてやってくる。このチャンスを生かして、日本人がどの様なウイルス気道感染にさらされるのか、コホート研究を大至急始めてほしい。その結果、ウイルスでウイルスを制する思いも掛けない予防法が開発できるかもしれない?

  1. okazaki yoshihisa より:

    新型コロナウイルスが持つ様々なインターフェロンを逃れる仕組みがウイルス干渉に抵抗力を持たせる可能性もある。
    Imp:
    ウイルス干渉とコロナウイルス。
    不謹慎かもしれませんが、大変興味深い生命現象だと思います

  2. 稲葉岳 より:

    スウェーデンのなるべくロックダウンをしない、制限をしないといういわゆる「集団免疫理論」にとても近い考えですね。
    日本はbcgワクチンの接種義務があるから日本国内のコロナの死者が少ないのは、その影響があるだろう。
    まだ楽観的にはなれないが、日本人のインフルエンザワクチン接種率が60%を超えたら新しい生活様式を終了できるのでは?

    あと感覚過敏でマスクが着けられない人達のためにも、早くケリをつけなければならないと思う。
    コロナは2週間程で直るけど、心や感覚の病気は一生治らない。
    いま一番辛い思いをしているのは、この人達なんだから。

    1. nishikawa より:

      干渉に獲得免疫が関わる場合と、そうでない場合があり、ウイルス干渉の多くは、BCGと同じで、IL1など自然免疫系の問題だと言えます。一方、新型コロナウイルスと騒動遺伝子を持つウイルスに前もって感染していたおかげで、病気が軽症で終わる場合も報告されています。今我が国では、いろんな説が飛び交っていますが、集団を選んで免疫状態を調べることなしに、PCR陽性者の数だけで議論しても時間の無駄だと思います。

  3. KUBOTA より:

    頼もしいご説、ありがとうございます。
    この時期を逃さず是非ともデーターを取って貰いたいももです。どこにお願いすればよいのでしょう。

    1. nishikawa より:

      我が国ではないのかもしれません。残念です。

  4. KUBOTA より:

    京都大学上久保教授はウイルス干渉の効果に確信的

    神戸大学岩田教授に至っては政府のインフルエンザワクチンの生産数を批判。
    岩田教授は少し煩いけれど今回の感染症に関しては
    非常に熱心働いていらっしゃる。この方々にデーターを取って貰うにはどうすれば良いのでしょうか。

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