私たちのゲノムが染色体に分かれて存在するということは、それぞれの染色体のDNAに端があるということで、二重螺旋がどこかで途切れることになる。一般の人から見ると、なぜそれが問題なのかと思われるかもしれないが、生物はDNA切断には大変敏感で、それを放置できないようにできている。というのも、遺伝情報の安定性にとって、DNA切断は大敵で、早く検知して修復するシステムが出来上がっている。このシステムは当然染色体の「端」に存在する断端も修復しようとする。その結果、染色体同士が融合したりして大混乱が発生し、細胞の生存は維持できない。
これを防いでいるのが染色体の断端を隠して守るDNAの繰り返し構造Tループと、それを形成するために動員される多くの分子が集まった複合体Shelterinで、この形成に関わる分子が欠損すると、染色体の維持複製が大混乱に陥って細胞は死んでしまう。
今日紹介する英国フランシスクリック研究所からの論文はこの染色体の端を守るShelterinの分子構造が全能性のES細胞と分化した体細胞では異なっていることを示した研究で11月25日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「TRF2-independent chromosome end protection during pluripotency (全能性の段階で見られるTRF2非依存的染色体断端保護)」だ。
断端が保護されていると言っても、DNA複製のたびに構造は一旦解消し、再度保護し直す必要がある。このメカニズムはいつもよくできていると思うが、一本鎖部分を折りたたんで端が見えないようにしている。この研究では、Tループ結合タンパク質の一つTRF2が欠損してもES細胞は正常にしかも何世代も分裂するという発見から始まっている。実際普通の細胞でTRF2が欠損すると、細胞の修復機構が動員され、染色体同士が融合したり大混乱に陥り細胞は死ぬ。
このような場合TRF2に変わる分子の存在を探索するのが普通で、おそらくこの研究でもこの方向で研究が行われたと思うが、最後まで読んでも結局ES細胞でTRF2に代わる分子というのは特定されずに終わる。しかし、ES細胞のテロメア保護機構を詳しく解析し、
- TRF2が必要ないという以外は、T ループ形成がSherterin複合体により形成され、断端が守られるプロセスは、普通の体細胞と同じ。TRF1とTRF2両方をノックアウトすると、Tループ形成ができずに、修復機構が動員され、染色体融合など大混乱が起こる。
- このTRF2非依存性Tループ形成は、ES細胞の全能性のプログラムと密接にリンクしており、分化が始まるとTRF2依存性に転換する。実際の胎児では、胚盤胞は形成されるが、分化が始まる3.5日には保護の外れたテロメアが検出され、大混乱が始まるのがわかるが、これらの細胞は全て全能性に必須の遺伝子Nanogの発現がオフになっている。
- ES細胞では、ほぼ正常のTループがTRF2なしに形成されている。
などを示している。
結論としてはTRF2無しにTループが形成できるということだと思うが、同じファミリー分子TRF1だけでいいのか、あるいは他の分子が存在するのかはよくわからない。酵母などではこのTループ結合分子は一つの分子で賄っている。このことから考えると、 ES細胞はより酵母に近いTループ形成システムを持っており、体細胞への分化が始まるとより複雑な2分子体制へと変換しているのではと個人的には想像する。考えてみると、体細胞のような死ぬべき細胞については、いつ死ぬかが重要で、より複雑なテロメア保護システムができたのかもしれない。いずれにせよ、ES細胞のTループをさらに詳しく調べることは、面白い発見につながるかもしれない。
1:シトルリン化タンパク質に対する自己抗体がRAの原因でないにしても、RAの病態形成に重要な役割を演じていると結論している。
2:多くの自己免疫病で病態はT細胞も関わる複雑な炎症なのに、CD20に対する抗体でB細胞を除去することで改善するケースが多い。
3:自己抗原によるB細胞の持続的刺激が、炎症持続の鍵になっている可能性を示す。
Imp;
自己免疫疾患における“自己抗体”の役割。
“Epitope supreding”現象不思議です。
ES細胞はより酵母に近いTループ形成システムを持っており、体細胞への分化が始まるとより複雑な2分子体制へと変換しているのではと個人的には想像する。
Imp:
昨日のを送信してしましました。
すみません。
ES細胞は、普通の体細胞とは違っているようです。
ナイーブiPS細胞はどうなのでしょうか
同じだと思います。