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4月22日:コホート、長期に記録し続ける事(American Journal of Psychiatryオンライン版掲載論文)

2014年4月22日
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昨日知人と我が国のコホート研究の現状について話す機会があった。もちろん我が国にも地道で長期にわたって維持されているコホート研究は数多くある。しかし何十年にもわたって集団を追跡する仕組みを最初から組み込んだ緻密な計画の提案はほとんどないのではないだろうか。一つの問題はコホートに目的が要求され、対象をただ記録し続ける事自体があまり評価されないためではと危惧する。この点で今日紹介する論文は学ぶべき所が多い。いじめの影響について調べた英国の研究でAmerican Journal of Psychiatryオンライン版に掲載された。タイトルは「Adult health outcomes of childhood bullying victimization:evidence from a five decade longigudinal British Birth Cohort (学童時のいじめが大人になった後の健康に及ぼす影響:英国の出生後50年追跡コホートからの証拠)。」だ。このコホートは英国で1958年に生まれた約17000人の子供を,11,16,23,33,42,45,50歳時点で様々な項目について調査を行う大規模なコホートだ。この対象集団が学校へ通う7、11歳の時点で聞き取り調査を行いいじめの有無を記録しておき、その時のいじめの影響を23歳、50歳時点で調査している。結果は深刻で、いじめを受けたグループは成人後も様々な精神的症状を示し、45歳以上で鬱病の頻度や自殺率が高い。しかし予想に反し、アルコール依存症とはあまり相関しない。また異常は精神状態にとどまらず、一般的な健康状態も侵される。更にいじめを頻回に受けたグループの男性は50歳時点で失業率が2倍弱高く、所得も約10%低い。この結果を見ると、今からすぐに学童期のいじめ防止に務めなければならないと確信する。我が国でもいじめは重要問題だが、これほど長期にわたる調査は進んでいるのだろうか?この様な調査がないと、いじめにあった子供達の心や身体の長期ケアのための体制を構想する事は出来ない。この論文を読んで感心するのは結果だけではない。最初から50年を超える調査期間を設定し、年齢に応じた様々な問題を調査できるように設計されている。即ち、プロジェクトを計画した人達が自分が結果を見るために努力したわけではない事だ。記録する事からしかわからない事があると言う強い信念に突き動かされてこのプロジェクトを構想し進めている。私たちAASJの目的の一つはシンクタンク活動だ。昨日議論した知人達と、今後時間をかけて我が国のコホート研究を独自に調査し、高い意志に裏付けられた研究か、自分のための個人研究かどうかという視点で検証評価を進め、結果を公表したいと思う。

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