今日のお昼2時から、難治性てんかんの子供さんをお持ちの保護者の方と、ケトン食についてzoom 勉強会を行い、その模様をそのままYoutube配信する予定だ(https://www.youtube.com/watch?v=f8En4tBse6o)。実際文献を集めてみると、様々な難治性てんかんに、かなりの効果を挙げている。ただ、ケトン食はカロリー制限でも、断食でもなく、一種体の代謝を変化させてケトン体を高いレベルで維持し、代謝だけでなく、ケトン体自体の細胞シグナルやエピジェネティック調節を変化させる力がある。従って、かなり高度な医療と言えるが、これを指導してもらえるクリニックはそう多くない。ぜひ保護者の方と話し合って、いいアイデアが出て来ればと期待している。
今日の勉強会にふさわしい論文はないかと探していたら、タイミングよく1月21日Nature Medicineにオンライン掲載された米国衛生研究所からの論文を見つけたので、紹介する。タイトルは「Effect of a plant-based, low-fat diet versus an animal-based, ketogenic diet on ad libitum energy intake(自由に摂取させた植物ベースの低脂肪食と動物ベースのケトン食の比較。)」だ。
最近食に関する論文が急速に増えているのを感じるが、読んでみるとこんなこともわかっていなかったのかと驚くことが多い。正確に低脂肪食とケトン食の比較をすることがこの論文の目的だが、裏返すとそんなこともできていなかったのかと意外だ。
読んでみると、一定数の人間を長期間拘束し、決まった食事を取らせるということ自体が難しい。この研究では21人のボランティアをなんと28日間も入院させ、低脂肪食2週間/ケトン食2週間、あるいはケトン食2週間/低脂肪食2週間とったときの、体重、エネルギー、脂肪、糖代謝などを詳しく調べ、それぞれの食事の効果を調べている。食事の内容は厳しくコントロールするが、量に関しては自由に食べさせるプロトコルを採用している。
結果は膨大で、しかも何か明確な結論があるというより、詳細なデータが得られたといった論文なのでまとめるのは難しい。とりあえず面白いと思った点だけを箇条書きにする。
- 最も驚くのは、ケトン食では摂取するカロリー量はかなり高いにもかかわらず、体重の低下は低脂肪食と同等か、それ以上に見られる点だ。すなわち、脂肪を多く摂取し、エネルギー摂取量が多くなるケトン食でも、体重を減らすという意味では機能する。
- インシュリン分泌量や食後血糖などで調べると、低脂肪食を続けると、当然のことながら、インシュリンの分泌は上昇し、血中グルコースも上がる傾向にある。
- しかし、インシュリン抵抗性をみる耐糖能試験では、ケトン食がインシュリン抵抗性を高めている。
- ケトン食をスタートすると、1週間でケトン体の一つβ-hydroxybutyrateが上昇する。
などが気になった。
要するに、食事で何かを達成することがいかに複雑な課題で難しいかがわかった。例えば、ケトン食は低脂肪食と比べるとはるかに植物繊維が少ない。従って、子供に使う場合は、腸内細菌の発達も考える必要が出てくるなどなどだ。栄養学というと、医学から弾き出された感じがあるが、21世紀に入って間違いなく再度重要な医学分野に躍り出たことは間違いがない。
21人のボランティアをなんと28日間も入院させ、低脂肪食2週間/ケトン食2週間、あるいはケトン食2週間/低脂肪食2週間とったときの、体重、エネルギー、脂肪、糖代謝などを詳しく調べた。
Imp:
癲癇とケトン食の関係、興味深いですね。
You tube、楽しみにしています。