AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 2月27日 COVID-19の新しい治療薬(2月26日号 Science 掲載論文)

2月27日 COVID-19の新しい治療薬(2月26日号 Science 掲載論文)

2021年2月27日

現在Covid-19に対する我々の武器は、ワクチンや抗体治療に集約されている感があるが、これまで紹介してきた様に新型コロナウイルス(Cov2)の細胞内での増殖過程とそれに関わるウイルス側、ホスト側の分子が明らかになるに従い、様々な過程を標的とする薬剤の開発が進みつつある。個人的には、ウイルスタンパク質の活性化に必須のプロテアーゼに対する阻害剤、特にコロナウイルス特異t的な阻害剤が開発されることを期待するが、臨床目処がついているのは、まだ他のRNAウイルスのプロテアーゼ阻害薬の使い回しの様だ。

一方、ウイルスタンパクやウイルスRNAと相互作用するホスト側タンパク質も解析が進んでおり、これについては、特効薬というほどではないが、いくつかの既存薬が、その作用メカニズムと共にリストされている。既に臨床に使われていることから、現在の標準治療に加える形で、着々と知見を進めることが重要だ。

今日紹介するマウントサイナイ医大から、2月26日号のScienceに発表された論文も、現在発表が増えつつある抗ウイルス薬研究の一つなのだが、なぜわざわざ今の時点でScienceに掲載されるのかという疑問と共に、ひょっとしたら治療薬として効果が証明されつつあり、エディターが選んだのではないかと期待を抱かせる前臨床研究だ。タイトルは「Plitidepsin has potent preclinical efficacy against SARS-CoV-2 by targeting the host protein eEF1A(ヒトeEF1Aを標的とするPlitidepsinは前臨床試験ではSARS-CoV-2に対して高い効果を示す)」だ。

以前にも紹介したが、このグループはウイルスタンパク質と結合するホストタンパク質を網羅的に解析し、ウイルスが必要とするホスト側の分子を抑制する抗ウイルス剤の開発を試みていた。その中で、ウイルスの複製に関わるNsp9とタンパク質翻訳に関わるエロンゲーションファクターと結合することを発見、元々骨髄腫などの治療目的で開発されていたeEF1A阻害剤に着目し、最終的にPlitidepsinがウイルスの増殖を抑制することを見出していた。

Plitidepsinに関しては既に第I/II相の治験はcompleteとなっているので、Cov2に対する効果も含めてかなり情報が集まっているはずだ。実際、そのことは論文に書かれており、また実験に使う量の安全性についてもこの治験結果をもとに議論している。そんな中で、純粋に培養細胞とマウスを用いた前臨床研究結果がScienceに発表されたということは、第III相に進めるよほどいいデータを持っていて、慌てて基礎データを発表してきたのかと勘ぐってしまう。

示された結果は、

  • ウイルス感染した細胞でのウイルス増殖を、既に安全が確認されている量のPlitidepsinで抑制することができる。
  • eEF1Aの変異体を用いた抑制実験から、PlitidepsinはeEF1Aに直接結合しウイルスの増殖を抑制する。
  • メカニズムとしては、ウイルスがNタンパク質を合成する際、ゲノムの一部を複製して、そこからもう一度短いプラス鎖のRNAを作り、それを翻訳するが、翻訳を抑制することで、このマイナス鎖の短いRNAの合成が抑え荒れることでウイルスの増殖が阻害されることによる。
  • マウスを用いる感染実験で、現在使われているRemdesivirを遥かに凌駕する治療効果がある。

とまとめられるが、この様な研究は多く発表されているので、これぐらいならScienceにはいくらCovid-19論文でも採択されないと思う。おそらく、治験の結果がかなり有望で、新しい治療薬として、remdesivirと共に利用可能であるという情報が回っている結果、Scienceに採択されたのではないだろうか。特にHost側の遺伝子を抑制する方法は、コロナウイルス一般に有効で、現在問題になっている変異ウイルスについても利用できる。そう勘繰ると、すぐに大々的に報道される様な予感がする。


  1. okazaki yoshihisa より:

    Host側の遺伝子を抑制する方法は、コロナウイルス一般に有効で、現在問題になっている変異ウイルスについても利用できる。
    Imp:
    治療薬開発も着実に進んでいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*