5月10日:手術中流れ出した自己血液をその場で再利用する心臓手術(6月発行予定Anesthesia and analgesia誌掲載論文)
2014年5月10日
読んで驚いたので紹介しておく。体外循環システムを使う心臓手術には大量の血液が必要だ。しかし我が国でも輸血用血液は慢性的に不足している。また、輸血自体保存による血液の変化で問題が起こる。これに対応するために手術中に出血した自分の血液を回収して使ったらと誰でもが考える。私は自分で手術をした経験がないが、横で見ていてやはり手術をしながら血液も回収してと言うのは手間がかかり過ぎ、手術がおろそかになる危険もある。とは言え背に腹は代えられなく、これに挑んだのが今日紹介する論文で、6月に出版される麻酔科の雑誌Anesthesia and Analgesiaに掲載された。タイトルは「Impaired red blood cell deformability after transfusion of stored allogenei blood but not autologous salvaged blood in cardiac surgery patients (心臓手術の際、保存他家輸血では起こる赤血球の形態異常は術中回収自己血輸血では見られない)」だ。2−3時間体外循環が必要な心臓手術を、術中回収自己血のみ、他家血主体+自己血、自己血主体+他家血の組み合わせで行い、術中及び術後1、2、3日で以上赤血球の数を調べている。結果は明瞭で、術中回収血液だけで十分手術が可能な事だけでなく、他家輸血で起こる以上赤血球の出現はほとんどなかったと言う結果だ。私は我が国でどの程度この方法が使われているのかよく知らないが、「モッタイナイ」の思想が血液ドナー不足を補ってくれる事は間違いない。保険収載を是非考えるべきだと思う。