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5月22日 Covid-19 ワクチンの副反応2: ワクチンによる血栓症治療についての症例報告(4月20日 J. Thrombosis and Haemostasis オンライン掲載論文)

2021年5月22日
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アストラゼネカ社やジョンソン&ジョンソン社のアデノウイルスワクチンにより普通では見られない箇所に血栓症が見られることがわかり、現在急速にその原因の研究が続けられている。重要なことは、最初報告されたときから、全例でplatelet factor -4に対する自己抗体が存在することで、これまでHeparin induced thrombosisとして知られていたヘパリンにより、PF4が重合して、それに対して抗体ができ、血小板が活性化されるのと同じメカニズムで血栓ができることが明らかになった。

私が最後に見た論文はThe New England Journal of Medicineでの緊急総説(図)だが、これによると、ヘパリンの代わりにPF4複合体を誘導する原因物質が特定されておらず、発症の頻度は低いが、死亡率が高いことから、多くの国で使用が抑制されており、またメディアによる報道もあって、接種可能な国でも人気が低い。

これらを受けて、2日前診断と治療のためのガイドラインが国連から発表された。

診断アルゴリズムとしては、血栓を疑わせる症状が現れたときは、ワクチン接種歴を聞き、ワクチン接種後4−20日の範囲であれば、ワクチン誘導の血栓症(VIPIT)を疑い、血小板低下、D-dimer上昇、血液像正常(血小板は除く)などが揃ったらVIPITを疑い、可能ならPF4-heparinに対する抗体を調べることが推奨されている。その上で、抗体を薄めるために高濃度免疫グロブリン投与が推奨されている。

今日紹介するウイーン医科大学からの論文は、この治療が成功した症例報告で、極めて稀な症例でも、瞬時に世界中に共有され、適切な治療につながっていることを示した論文だ。症例報告だが、紹介する。タイトルは「Successful treatment of vaccine-induced prothrombotic immune thrombocytopenia (VIPIT)(ワクチンにより誘導された免疫的血小板減少症の治療成功例)」だ。

患者さんは、アストラゼネカワクチン接種後一時発熱したが、アスピリン400mgを服用して軽快、その後は日常生活を送っていたが、8日目に大きな血腫ができていることがわかり、次の日は他の場所にも血腫ができていたので大学病院の救急を訪れている。

コロナPCR陰性、D-dimerの上昇、血小板減少が確認され、「血栓を疑いCTで全身を調べているが、明瞭な血栓は認めていない。そこで、VIPITが疑われ、PF4/heparinに対する抗体を調べると、異常値を示していたのでIVIPITと確定、すぐ治療を行なっている。

当然ヘパリンは絶対に使ってはならないが、凝固を防ぐ必要があり、ダナパロイド、フィブリノーゲンの低下を補うため、フィブリノーゲン、そして濃縮免疫グロブリンを入院後1、2日(ワクチン接種後9、10日目)に投与すると、すぐにD-dimerが低下し、血小板も投与すぐから上昇を始め、1週間で完全に退院できたという症例だ。

この症例は、ガイドラインに示された診断と治療を絵に描いたようなケースで、

ワクチン接種後、4日以降に様々な症状、特に頭痛や血腫などが見られたらVIPITを疑い、すぐに抗凝固剤(絶対ヘパリンは使わない)と濃縮免疫グロブリン(プレドニンとともに投与している)を投与すれば、すぐに回復するというものだ。

以上、我が国では当分は使われないようだが、使われるようになっても用意ができて居れば恐れる必要はないことを示している。ただ、アデノウイルスワクチンは今後も利用されると思うので、この原因についてはできるだけ早く特定されることを望む。