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5月23日:ブラジルワールドカップでのデング熱の危険性(The Lancet Infectious Diseaseオンライン版掲載論文)

2014年5月23日
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連休中ボルネオのジャングルをトレッキングしたが、マラリアやデング熱を媒介する蚊に刺されない様万全の注意を払った。注意が過ぎて長袖、ヒルよけソックスなど重装備で熱帯を長時間歩いたため、今度は汗疹で1週間位苦労するはめになった。同じように、ブラジルには熱帯雨林があり、マラリアやデング熱の危険地帯だ。特にデング熱の発症はブラジルが世界中でも一番高いようだ。デング熱と言うのはウィルス性の病気で、筋肉や関節の痛み伴う発熱が特徴だ。ほとんどの場合死に至ることはない一過性の病気なので心配はないが、しかし6月ワールドカップサッカーで大挙して訪れる日本人ファンには注意を促した方がいい。そのための最適な論文がThe Lancet Infectious Diseasesオンライン版に出ていた。ブラジルからの研究でタイトルは「Dengue outlook for the world cup in Brazil: an early warning model framework driven by real-time seasonal climate forecast(ブラジルワールドカップサッカーでのデング熱展望:リアルタイムの天気予報に基づく早期警戒モデル。)」とドンピシャの仕事だ。研究では2000年から2013年までの天候データ、デング熱発症データなどを調べ、それに基づいて階層ベイズ法と言う推計学の手法を用いて、ブラジル各地域でのデング熱発症予報モデルを構築している。モデルについては2013年まで実際の発症数と比較して予測確度を計算している。率直に言って、あたる確率は思ったほど高くなく、予想としては天気予報よりはるかにあたらないと考えた方が良さそうだ。ただサンパウロ、ナタルなど一部の都市については予測の正確度は高いので、十分参考になると思う。転ばぬ先の杖だ。さてワールドカップ開催中の予想だが、低リスク都市;ブラジリア、サンパウロ、クイアバ、クリチバ、ポルトアレグレ、中リスク都市;リオデジャネイロ、ベロホリゾンテ、サルバドール、マナウス、高リスク都市;レシフェ、フォルタレザ、ナタルだ。驚いたことに我がNipponは予選リーグをレシフェ、ナタルクイアバで戦う。即ち高リスクの2都市で戦わなければならない。特にナタルは予想確度が高い地域なので、気をつけた方がいい。ここで高リスクとは10万人に300人が発症する。致死的でないとは言え無視できない数字だ。選手のキャンプ地はリスクが低そうなので少し安心したが、やはり注意は喚起した方が良さそうだ。開催国ブラジルの研究者の責任感を感じる仕事だ。

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