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8月1日 mRNAワクチンの副反応の生物学を理解する(7月12日 Nature オンライン掲載論文)

2021年8月1日

以前も述べたが、ワクチン接種を躊躇する人の多くは、全く荒唐無稽な意見に惑わされているのではなく、「mRNAワクチンは初めて人類に使われるので、副反応など長期影響をもう少し見てから決断したい」という、当初は専門家からも聞こえてきた考えに基づいているように思う。

ただ、ほとんどの専門家がワクチン推進を唱えるようになった今、判断を変えない一般人が、何を根拠に躊躇しているのか、ぜひ詳しい分析をしてほしいと思う。専門家としていうと、ワクチン接種を受けるということは、当然様々なリスクが伴うことは明らかだ。そしてそのリスクをどう判断するのかも個人の状況によって異なる。従って、一般の方が副反応について、何が知りたいのかを知り、それに正確に答えるためのデータを早急に集めることが科学の使命だと思うが、現在まで何人に熱が出たとか、アナフィラキシーの頻度といった、医療統計的な答えしか専門家も持っていなかった。

今日紹介するCovid-19のGood Newsは、スタンフォード大学から7月12日Natureにオンライン出版された論文で、医療統計ではなく、ワクチン接種後私たちの体の中で何がおこっているのか、末梢血しか利用できないという限界はあるものの、徹底的な解析結果が出てきたことで、私たちの体にとってワクチンとは何かに、さらに詳しく答えられるようになった。タイトルは「Systems vaccinology of the BNT162b2 mRNA vaccine in humans (BNT162b2 mRNAワクチンの系統的ワクチン学)」だ。

この研究では、ビオンテックのmRNAワクチンを接種した対象者の抗体やT細胞反応だけでなく、1回目、2回目接種後の血中サイトカイン量および、免疫関連細胞の数を詳細に調べることで、mRNAワクチンの反応、副反応のメカニズムを探っている。

まずワクチンの効果を、中和抗体価および、T細胞反応誘導を指標に確認している。昨日述べたように、どちらの免疫反応も個人差は大きい。また、ワクチンにより誘導された抗体は、南アフリカ株に対してはほぼ十分の1の活性に落ちている。

さらに残念なことに、年齢と抗体価は逆比例している。この辺が、ファイザーが高齢者への3回目の接種を呼びかける根拠かもしれない。

効果については、これまでも多くの論文があるが、副反応の背景になる炎症誘導作用については、これまでほとんどデータがない。これについて、この研究では徹底的に調べている。

  • ワクチンでなくとも、mRNAを頻回に注射し続けると、炎症が誘導され、それによるエピトープ拡大現象により、自己抗体が誘導されることがあるが、2回接種では、自己抗体はほとんど誘導されない。
  • 細胞レベルで最も目立つのはCD14CD16陽性のintermediate monocyteと呼ばれる、強い炎症惹起能力のある細胞の増加だ。これと呼応して、血中のインターフェロンγとその下流のシグナルが上昇する。
  • これらの上昇は、1回目の摂取でも起こるが、2回目の方が数段強い。
  • このインターフェロンγの作用をうけた末梢血は、炎症誘導型に転写プロファイルが変化する。また、2回目の接種では、自然免疫に関わる遺伝子の発現が誘導されるが、ほとんどは5日程度で正常化する。
  • Single cell RNA sequencingを用いて末梢血を分画し、ワクチンにより最も変化する分画を探索すると、CD14陽性intermediate monocyteを含むクラスターを特定している。このクラスターはまさにインターフェロンγを分泌する細胞が含まれるクラスターで、2回目の接種直後に上昇する。
  • これに対応する細胞クラスターは感染者ではほとんど発見できず、ワクチン接種特異的。
  • 詳細は省くが、リンパ球の反応も含めてmRNAワクチンの末梢血への効果は、他のワクチンとかなり違っている。特に末梢血に抗体産生細胞があまり流れてこない点で、mRNAワクチンはユニーク。
  • mRNAワクチン特有のサイトカイン上昇や、細胞クラスター上昇の程度は、確実に抗体やT細胞反応の強さと比例している。これがそのまま発熱や痛みとどうつながるのかについては示されていないが、自覚症状ではなく、客観的データで判断した副反応が強いほど、免疫ができやすいと言える。

以上が結果で、最後の副反応が強いほど免疫も高いという話も含め、効果と副反応を単純に分けることの難しさを物語る結果だ。

昨日も述べたが、効果だけでなく、副反応についてもこのように徹底的に調べることができる。そして、mRNAワクチンといえども複雑な体の反応を誘導し、しかもその個人差は大きい。

残念ながらこの研究では最も重要なリンパ節での反応が調べられていない。ただ、これほどの数のワクチン接種が行われており、おそらく接種後事故で亡くなった人のリンパ節の研究結果も追々出てくるだろう。そのデータが今回のパンデミックに役立つか分からないが、間違いなく次のmRNA ワクチン開発に大きく役立つことは間違いない。

最後に個人的印象だが、このようなパンデミックな状況で、ワクチン接種のほうが怖いと言える人は、本当に勇敢な人だと思う。いち早くワクチンを接種した私は、臆病な人間なので、3回目も射ちたい。


  1. okazaki yoshihisa より:

    残念ながらこの研究では最も重要なリンパ節での反応が調べられていない。
    Imp:
    感染症・悪性疾患・自己免疫疾患治療の新たな歴史を拓く技術!!
    詳細を知りたいところです。

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