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8月6日 細菌性腸炎は腸上皮細胞のアポトーシスにより促進される(8月4日 Nature オンライン掲載論文)

2021年8月6日
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新しいNatureオンライン版を読み始めて最初に目に止まったのが、100歳以上生きることができた百寿の人たちの長寿の一因が、胆汁酸を分解して抗菌力の高い代謝物質を作り、腸内細菌叢を常に健康に整えているためであることを示す、面白い論文だった。ただ著者を見ると、京大時代の大学院生だった、現在慶應大学教授の本田さんの研究室からだったので、泣く泣く関係者の論文は紹介しないと言うルールに従った。もちろん慶應大学からプレスリリースが出ているので、是非ご覧いただきたいと思う(https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:3xDi4ZkIGb8J:https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2021/7/30/210730-1.pdf+&cd=2&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=firefox-b-d)。

代わりにベルギー・ゲント大学から同じ号に発表された、腸内の細菌感染を細胞死に陥った腸上皮が増悪させると言う少し恐ろしい研究を紹介する。タイトルは「Microbes exploit death-induced nutrient release by gut epithelial cells(細菌は腸上皮細胞死により誘導される栄養物質を利用する)」だ。

おそらく最初から、腸上皮細胞から遊離される栄養物を病原菌が使っていると言う仮説があったように思う。Caspase3による腸上皮細胞のアポトーシスを誘導したときに得られる上皮細胞上清を、サルモネラ菌培養に加える実験を行い、期待通り細菌の増殖が10倍上昇することを確認する。また、サルモネラ菌だけでなく、病原性大腸菌やクレブシエラ菌でも同じことが見られることを明らかにしている。

その上で、腸上皮上清により誘導されるサルモネラ分子の中に、pyruvate-formate lyaseを発見、細胞死により分泌されたピルビン酸がサルモネラ菌の増殖を誘導していると結論した。事実、この酵素が欠損したサルモネラ菌に上清を加えても増殖は促進されない。また、上皮のピルビン酸合成を止めた後、細胞死を誘導した場合、上清の活性は消失する。

以上の試験管内での結果を踏まえて、今度は実際に腸内で細胞死が高まると、サルモネラ感染が促進されるか調べている。まず、caspase3を誘導する実験系で、サルモネラ菌の定着が促進されることを確認した後、TNFにより炎症を誘導したときに起こる細胞死、あるいは抗ガン剤のような細胞障害性化合物を投与したときに起こる細胞死のような、より臨床的なセッティングでも、同じことが起こるか調べている。結果は期待通りで、炎症による細胞死の結果、腸内に遊離される代謝物が、病原菌の増殖を促進していることを示している。

様々な実験が行われているが、結果は病原菌は炎症を利用しているという話に尽きる。実際には人間で確認することが必要だが、腸だけでなく様々な臓器で炎症が細菌感染を誘導する普遍的なメカニズムかもしれない。

  1. 本田賢也 より:

    西川先生、
    いつもコメントありがとうございます。
    励みになります。

    1. nishikawa より:

      皆さんが本田さんの周りで協力しあっているのがよくわかる仕事でした。期待しています。

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