二足歩行が、他の類人猿から分かれた人類がアフリカを出て世界に広がる最も大きなきっかけになったことは間違いない。この意味で、1976年Leakyにより発表の、タンザニアLaetoliで発見された366万年前の二足歩行の足跡についての論文は(論文1)、大きな反響を呼んだ。
ただ、その後でこの足跡が発見された場所(SiteA)に近いSite Gから、ほぼ完全な、しかも長い距離にわたる足跡が発見されたため(論文2)、歩行が不自然だったSiteAの足跡は、Leaky自身により小熊が二足歩行した結果ではないかと結論づけられ、忘れられていた。
今日紹介するオハイオ大学からの論文は、熊の足跡として忘れられたSiteAの足跡を再度分析し直した研究で、12月1日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Footprint evidence of early hominin locomotor diversity at Laetoli, Tanzania(タンザニアLaetoliに残る足跡は初期原人の歩行の多様性を示している)」だ。
現金なもので、SiteAの足跡はケアされずに放置されていたようだ。このグループは、同じ足跡をもう一度クリーンアップし、3D写真装置で計測し、現存の様々な動物の足跡、およびSiteGの足跡などとの比較を行っている。
まず、熊の二足歩行、チンパンジーの二足歩行との比較から、例えば爪の後がない頃、かかとが広いこと、などから原人の足跡と結論している。
その後で、足跡自体の計測結果を、ホモサピエンス、チンパンジー、SiteG, SiteSの足跡と比較し、原人と考えて良いが、SiteGやSiteSの足の持ち主、アウストラピテクス・アファレンシスとは異なる原人ではないかと結論している。
一つの実験で決定的に決められない課題については、何度も何度も、しかもプロの頭で繰り返し検討し直すことの重要性を示す論文だった。
今日は午後には、もう一つ発生学の最も重要な課題について考え抜いた熊本大学のShenさんの研究を紹介する予定でいる。
二足歩行が、他の類人猿から分かれた人類がアフリカを出て世界に広がる最も大きなきっかけになったことは間違いない。
Imp:
今年の夏“下駄骨折”を経験しました。現生人類が経験する、大変ポピュラーな骨折のようです。
“第5中足骨の基部”に付着する“短腓骨筋腱”による剥離骨折です。
この“骨折を引き起こす解剖学的構造”=人類の二足歩行が、未だ進化の途上にある証だとか。。。
主治医の整形外科Drからご教授いただきました。
完璧な二足歩行の獲得は、“四つ足動物”には大きな難題のようです。