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7月19日:通院を減らす工夫(7月16日アメリカ医師会雑誌)

2014年7月19日
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症状の中でも痛みは厄介だ。持続的に続くだけでなく、時間によって大きく変化する。その度に何が起こったのか不安が深まる。最終的にモルフィネの使用に至るまで様々な鎮痛剤が開発されているが、不安になると医師の一言に頼りたくなる。実際症状を聞いてもらって対応してもらうと、精神的にも少し痛みも緩和することを多くの人は経験していると思う。私も若い時尿道結石の痛みに襲われたとき、尿中に潜血を認めて尿道結石であることがわかると、痛みがずいぶん楽になったことを覚えている。今日紹介する論文は、局所、全身を問わず慢性の筋肉や骨格の痛みを訴える患者さんの痛みに対して、自動電話やインターネットで対応できないか調べたインディアナ大学医学部の研究で、7月16日号アメリカ医師会雑誌に掲載された。タイトルは、「Telecare collaborative management of chronic pain in primary care: a randomized clinical trial(一次医療機関に通院する患者の慢性的痛みを通院なしに協調して治療する)」。研究は慢性の筋骨格痛に悩む患者さん250人を無作為に2群にわけて、これまで通り開業医さんに通院して治療を受ける群と、定期的な電話やインターネットの聞き取りを受ける群に分けた。後者は、最初の1ヶ月は毎週、次の3ヶ月は2週間に一回、そして残りの8ヶ月は月一回、自動応答電話かインターネットを用いて痛みや、他の症状、不安感など22項目にわたる質問に答える。この結果は、医師と看護婦さんのチームが検討し、得られた結果に応じて鎮痛剤を選び処方する。同時に、大きな変化があった場合は看護婦さんが電話で話を聞いて突発的な問題が発生していないか調べる体制をとっている。1、3、6、12ヶ月目にインタビューを行い痛みの改善度、治療に対する満足度などを調べている。結果はかなり劇的で、普通の通院治療を受けていた群と比べて、BPIと呼ばれる指標(治療前は5.3程度が、遠隔ケアを受けたグループでは3.57に低下したのに対し、対照群では4.59にとどまっている。なによりも、満足度が高く8割の患者さんがサービスに満足している。他にも、看護婦さんの電話も痛みの緩和に役立つようだ。きめ細かくケアしているようだが、選んだ薬剤にはそれほど大きな差がないことから、精神的なケアも大きいことがわかる。この治験のポイントは、痛みと言う症状に対し、遠隔ケアを用いることで、チームによる一元的対応が可能になっている点だ。症状に痛みの占める割合は高く、医師に対する不満足の大きな原因になる。自動応答やインターネットでも定期的に自分の症状を聞いてもらい、それに対して医療側からリスポンスがあることで大きな満足が得られることは、高齢・過疎化の進む我が国にも参考になると思う。とは言え、我が国でこの様な治療を行おうとすると、遠隔の聞き取り、看護婦さんのコールなどを治療として認定し、通院しないことをインセンティブとして診療報酬システムに組み込んで行く必要がある。その時、この様な痛みの遠隔緩和ケアを、一元的対応と遠隔ケア導入のための例題として取り組んでみる価値は大きいと思う。日本医師会の理解も必要だ。

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