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1月30日 Tau結合分子からTaunopathyの原因を探る(1月20日 Cell オンライン掲載論文)

2022年1月30日

アルツハイマー病(AD)を始め、様々な神経疾患の一群を、病状との相関が高く、さらに神経から神経へと伝搬可能なTauタンパク質の異常症と捉えTaunopathyとして眺め直す研究が進んでいる。ただTaunopathyといっても、ではTauの機能と病気との関連を説明せよと言われると、Tauについて微小管結合タンパク以外の何の知識も無いことを思い知る。

その意味で今日紹介する米国のグラッドストーン研究所をはじめとする3つの機関が共同で発表した論文は、私の頭の中のTau像をより明確にしてくれるとともに、ADをはじめとするTaunopathyの原因について新しい説明を与えてくれたという意味で大変重要な研究ではないかと考える。タイトルは「Tau interactome maps synaptic and mitochondrial processes associated with neurodegeneration(Tauと相互作用する分子マップはシナプスとミトコンドリア過程が神経変性に関わることを明らかにした)」だ。

これまでTauと相互作用する分子については数多くの研究が行われてきており、私もいくつかは目にしてきた。ただ、この研究では神経細胞中でTauと相互作用を行っている分子を網羅的に特定し、その中からTauの変異により相互作用が変化する分子を探そうとしている点がユニークだ。

この目的のために、Tauに標識をつけて結合分子を免疫沈降する方法とともに、Tau分子のN末、C末に近くのタンパク質をビオチン化する酵素を合体させたキメラ分子を用いて、Tauと相互作用している分子をビオチン化し、回収する方法を用いている。

まずビオチン化方法を用いてTauと相互作用する分子の中から、微小管の構成単位tublinと結合する分子を除くと、246種類という多くの分子が何らかの形でTauと結合している。そして、網羅的に調べることでしか見えないことがあることを実感する。なんといっても、核内タンパク質から、シナプトソーム形成まで、実に多様な分子と様々な場所で様々な分子と相互作用しており、微小管と相互作用する分子などと思っていたイメージが覆される。

またシナプトゾームに関わる機能についてみても、N末と相互作用する分子、C末と相互作用する分子は、異なる過程に関わっており(前者はシナプス接合部の形成、後者は細胞膜融合)、Tau機能の重要性を示唆している。

その中で、Taunopathyに関わる分子を探す目的でいくつかの実験が行われ、以下の重要な発見が行われている。

1)変性したTauは神経細胞間で伝搬する。すなわち、神経刺激に応じて細胞外に分泌され、また取り込まれることを意味するが、神経を活性化したときだけにTauと結合する分子を調べると、シナプトソーム形成時に細胞質側に飛び出ている分子と相互作用している。この結果から、Tauの分泌がactive zoneの細胞膜融合を介して起こることが示唆される。

2)様々な分子との相互作用は存在するが、前頭側頭認知症を誘導する変異型Tauとの結合が低下する分子を調べると、ほとんどがミトコンドリアの内側の膜に存在する分子。

3)前頭側頭痴呆症の変異があると、ミトコンドリア膜を通したプロトンの漏出が高くなり、ミトコンドリアの酸化的リン酸化とエネルギー生産とのカプリングが悪くなる。

4)前頭側頭痴呆症で低下が見られるTau結合分子のレベルは、ADをはじめとするTaunopathyの患者さんで低下している。

以上が主な結果で、本当はさらに様々な可能性を含んでいるとはおもうが、これだけでも私のTauに対する理解は大きく変化した。AD治療開発にも期待したい。


  1. okazaki yoshihisa より:

    核内タンパク質から、シナプトソーム形成まで、実に多様な分子と様々な場所で様々な分子と相互作用しており、微小管と相互作用する分子などと思っていたイメージが覆される。
    Imp:
    Tauの細胞内での“新たなイメージ”像が明らかに。

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