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2月24日 With Coronaを超えたWith Virusは可能か(2月16日 Cell オンライン掲載論文)

2022年2月24日

英国のジョンソン首相は、新型コロナウイルス感染の隔離義務を撤廃し、この感染症はもはや国家が管理するもので無く、個人の問題だとまで踏み込んだ。この理由は、新型コロナウイルス感染が風邪と同じ感染症になったというのでは無く、新型コロナウイルスを撲滅することは不可能で、今後何年もウイルスと付き合っていく必要があることを覚悟したからだろう。もちろん、ウイルス感染症の治療法が確立してきたことも大きい。

私もこのWith Coronaの覚悟とそれに合わせた対応の必要性はよくわかるが、さらにこれを超えて、With Virusのリスク管理と覚悟も必要であることを示す論文が、江蘇動物免疫工学研究所から発表された。タイトルは「Virome characterization of game animals in China reveals a spectrum of emerging pathogens(中国の狩猟動物に存在するウイルスの網羅的解析から新興病原体の範囲が明らかになる)」だ。

今回の新型コロナパンデミックで最初に起源として疑われたのは武漢のマーケットで取り扱われている野生動物だった。結局まだはっきりとした答えは出ていないが、多くのウイルスがコウモリをはじめとする野生動物から伝搬してくることは間違いが無い。この研究では、2017年から2021年にかけ(実際には今回のパンデミックが始まった後研究は加速しているようだが)、中国で食用として狩猟対象になっている動物、18種、1941匹を、中国全土から集め、様々な組織からRNAを抽出し、配列を決定した後、配列の中に含まれるウイルスゲノムを特定している。

最終的に動物に感染しているウイルスとして16ウイルス系統、102種のウイルスが特定されている。このように、ウイルスは極めて多様で、実際名前を示されただけではほとんどイメージが浮かんでこない。これらのウイルスの分析から以下の結論が出ている。

1)今回分離された中には、SARS型のコロナウイルスは含まれていなかった。わざわざこの結論が最初に持ってこられるのは、中国に注がれる疑いの目を意識してのことだが、これがたまたまなのか、SARS型はもともと狩猟用動物では無く、コウモリなどに由来するのか、まだ研究が必要だろう。いずれにせよ、動物にも感染することは確かだ。

2)種を超えて感染が起こるウイルスは珍しくない。例えばコロナウイルスに関して言えば、ハリネズミから分離されたMERS型ウイルスは、将来の脅威になる可能性がある。

3)特にコロナウイルスでは、動物種を超えて感染する確率が高い。また、異なる動物種の中で組み換えも頻回に起こる。

4)H9N2型インフルエンザウイルスは多くの種に感染し、今後パンデミックを起こす脅威になる。

5)人間に対する病原性がわかっているウイルスが多くの動物にも感染している。

6)インフルエンザBのような、本来人間特異的と考えられていたウイルスも、動物に感染している。

以上が主な結果だが、要するに私たちは動物と共存するように、ウイルスとも共存する必要がある。そのためのリスク管理、及び感染を予想した対策を前もって整えることが、今後のウイルス対策の核になるべきであることをこの論文は示している。新しいWith Virusの時代に備える科学と政治が求められる。


  1. okazaki yoshihisa より:

    第7波も予想されています。
    今後も新種出現は避けられないようです。

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