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3月24日 B細胞もガンと闘っている(3月31日号 Cell 掲載論文)

2022年3月24日

例えばCD20に対する抗体のように、ガンに対するモノクローナル抗体(mAb)治療は存在する。だからといって、ガンワクチンという場合、感染症と違ってまずガンに対する抗体を誘導するイメージはなく、もっぱらキラー細胞誘導を目指す。

ところが今日紹介するイスラエル・ワイズマン研究所からの論文は、ガンに対してB細胞も局所で反応し、自己抗体を産生、これがガンを抑える作用を持つことを示した研究で、3月31日号Cellに掲載された。タイトルは「Tumor-reactive antibodies evolve from non-binding and autoreactive precursors(腫瘍に反応する抗体が、結合性のない抗体から進化してくる)」だ。

おそらくこの研究では、ガン細胞に対する抗体が存在する患者さんがいるはずだと決めてかかって研究を進めている。理由はわからないが、まず予後が悪い低分化型漿液性卵巣ガンの手術後のコホートを選び、摘出した腫瘍組織が自己の抗体と結合しているかを調べ、なんと62%もの組織が、自己の抗体と結合している、言い換えると患者さんは卵巣ガン抗原に対して抗体を作っていることを明らかにしている。

またフレッシュなサンプルから細胞を取り出し、フローサイトメーターを用いた解析を行い、抗体が細胞表面に結合していることを確認している。

他のリンパ組織を調べていないので、最終結論は難しいが、このグループはこの抗体が腫瘍内のB細胞で合成されていると考えおり、実際、腫瘍組織にB細胞だけでなく、抗体を分泌するプラズマ細胞を見つけることができる。

この研究の中で最も重要な結果は、この抗体分泌細胞が、組織内に多いほど予後がいいと言う発見で、高倍率視野で見つかる抗体分泌細胞が100を超えると、なんと7割近い人が200ヶ月以上生存している。すなわち、ガンに対する抗体を腫瘍組織で合成できると、予後が圧倒的に良い。

後は、腫瘍に浸潤するB細胞の抗体遺伝子を再構成する実験から、これも驚くがほとんどの抗体が細胞表面に発現しているMMP14に向いていることを明らかにしている。

以上の結果は、B細胞の場合、ガン特異的抗原に反応すすのではなく、特定の自己抗原に対する自己抗体が合成されていることになる。そこで、このような抗体の特異性がどのように生まれてきたのか、存在する抗体の突然変異を元に戻す実験を行い、最初は全くMMP-14に反応しない抗体が、腫瘍内で突然変異を繰り返してMMP-14反応性を獲得するタイプと、最初から腫瘍に結合できるタイプの抗体の2種類が存在することが明らかになった。

以上が結果で、ガンが発現する自己抗原に反応する抗体産生細胞が腫瘍内に浸潤し、うまくいけばそのまま自己抗体を分泌し続け、また反応できない場合は突然変異を繰り返し、結合性の高い抗体が選択され、ガンに反応して、ガンの増殖を様々なメカニズムを介して抑えると言う話だ。

この論文だけ読むと、あまり面白くないと思ってしまうと思うが、最近主要組織内に2次リンパ組織が形成されることが示されており、特に卵巣腫や膵臓ガンのような間質反応の強いガンでは、この観点から自己抗体分泌を見直してみると、随分面白い話が出てくるような気がする。


  1. okazaki yoshihisa より:

    ガンが発現する自己抗原に反応する抗体産生細胞が腫瘍内に浸潤し、うまくいけばそのまま自己抗体を分泌し続け、
    また反応できない場合は突然変異を繰り返し、結合性の高い抗体が選択され、ガンに反応して、ガンの増殖を様々なメカニズムを介して抑える。
    Imp:
    組織内B細胞も腫瘍免疫では重要な働きをしているようです。

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