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4月1日 肥満がアレルギー症状を悪化させるメカニズム(3月30日 Nature オンライン掲載論文)

2022年4月1日
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Covid-19重症化のリスクファクターとして肥満がリストされ、この指針に従って治療選択も行われているが、そのメカニズムについては明らかになっているわけではない。一般的に、多くの炎症反応が肥満によって悪化することは広く知られているため、Covid-19のケースもその一つかなと納得してしまっている。

今日紹介するソーク研究所とカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、接触性皮膚炎をモデルとして、アレルギー性炎症が肥満で悪化するメカニズムを解明した臨床応用も期待できる研究で、3月30日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「Obesity alters pathology and treatment response in inflammatory disease(肥満は炎症性疾患の病理と治療反応性を変化させる)」だ。

研究ではまず、高脂肪食を70日与えて肥満にしたマウスに、化学化合物(MC903)を塗布してアレルギー性皮膚炎を誘導し、正常マウスと比べている。結果は期待通りで、肥満マウスでは炎症の程度が数倍高い。

この炎症はT細胞の抗原反応により誘導されることがわかっているので、次に炎症部位のT細胞をsingle cell RNAseq(scRNAseq)で調べると、同じ炎症と言っても参加するT細胞が質的に異なっていること、すなわち通常のTh2型T細胞が主体の反応から、Th17主体の反応へ変化している。

これを裏付けるように、Th2型反応に対して効果が高いIL4/IL13に対する抗体治療を行うと、正常マウスでは炎症が軽快するのに、肥満マウスの炎症は逆に悪化する(これは現在抗体治療を行っている皮膚科にとっては重要な所見だと思う)。

T細胞の分化にRORγなど核内受容体が関わっていることが知られているので、肥満によるT細胞の質的変化の原因が核内受容体の変化に起因すると仮説を立て、肥満と正常マウスのTh2型細胞を比較した結果、肥満マウスでPPARγの発現が低下していることを発見する。すなわち、Th2型の反応が維持されるためにはPPARγが必要で、これが低下することでTh17型へとシフトする可能性が示された。

この可能性を確かめるため、T細胞でPPARγ遺伝子をノックアウトしたマウスを作成し、接触性皮膚炎を誘導すると、肥満マウスと同じようにTh2型反応がTh17型にシフトし、またIL4/IL13に対する抗体治療により、より炎症が悪化する。すなわち肥満による反応の質的変化を完全に再現できる。

以上の結果から、肥満マウスでもPPARγを活性化させることで、Th2型の炎症に戻セル可能性が示唆される。そこで、糖尿病のインシュリン抵抗性を治療するために用いらているチアゾリジン系のPPARγ活性化剤を投与して、肥満マウス接触性皮膚炎を誘導すると、期待通りTh2型の反応に戻り、炎症の程度は低下、またIL4/13による治療が可能になる。

以上が結果で、モデルマウスに実験は終始しているが、臨床的なヒントが示された面白い研究だと思う。

この研究をトランスレートするとすると、皮膚炎や喘息が通常の治療法では改善しない肥満患者さんには、出来ればTh17型へのシフトが起こっているか調べた上で、チアゾリジン系の薬剤を併用してみるという話になるのだろう。また、Covid-19の炎症についても、PPARγについて調べ直してみることは重要だと思う。

  1. okazaki yoshihisa より:

    皮膚炎や喘息が通常の治療法では改善しない肥満患者さんには
    1:Th17型へのシフトが起こっているか調べ
    2:チアゾリジン系の薬剤を併用してみる
    Imp:
    肥満者では炎症の機構も変化しているようです。

  2. Michiko Kawakita より:

    肥満でPPARγの発現が抑えられる、というのは、一般的なんでしょうか?

    1. nishikawa より:

      元々インシュリン抵抗性を押さえる目的で、例えば武田のアクトスのように使われていました。これはもっぱら脂肪細胞のPPARγを狙っていたと思います。肥満で上がってくるのと違いますか?

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