AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 4月5日 驚くことにプレドニンが肥満治療に使える(4月1日 The Journal of Experimental Medicine オンライン掲載論文)

4月5日 驚くことにプレドニンが肥満治療に使える(4月1日 The Journal of Experimental Medicine オンライン掲載論文)

2022年4月5日
SNSシェア

プレドニンは今も様々な炎症性疾患に使われるが、多くの副作用を伴う。その中で代謝に関係するもとして、血糖の上昇、高脂血症、肥満、筋力現象などが知られている。メカニズムは異なるが、私たちがメタボとして問題にしている症状が全部出てしまう。

ところが今日紹介するシンシナティ大学医学部からの論文は、同じプレドニンでも1週間おきに投与すると、今度は逆に代謝改善を誘導して、肥満を防ぐという驚くべき話で、4月1日The Journal of Experimental Medicineに掲載された。タイトルは「Intermittent prednisone treatment in mice promotes exercise tolerance in obesity through adiponectin(マウスでの間欠的プレドニソロン治療はアディポネクチンを介して肥満での運動能力を高める)」だ。

このグループは筋ジストロフィーの患者さんに対して隔週でプレドニン(1-4mg/Kg)を投与することで、筋肉にエピジェネティックな変化を誘導させ、筋力低下を防ぐとともに、インシュリン分泌、血糖、血中脂肪などが抑えられることを2019年に発表していたようだ。

この研究では、特に代謝改善に着目して、正常マウスの食べ過ぎによる肥満を同じ方法で改善できないかを調べ、1mg/Kgのプレドニンを週1回投与することで、1)食べ過ぎによる肥満が防げ、2)肥満による筋力低下が防げ、3)組織学的に筋繊維上昇と脂肪細胞低下が観察できることを明らかにしている。すなわち、毎日プレドニンを投与するのとまるで逆のことが起こっており、マウスの話とは言え、高い効果が示されている。

代謝について調べると、これも連日投与の逆で、血糖の低下、グルコーストレランスなどが見られ、基本的に筋肉ミトコンドリアでのグリコリシスからTCAサイクルの活性が高まっている結果であることが示されている。まさに、現代社会の健康問題を解決する切り札とも言える効果だ。

さらにメカニズムを探ると、プレドニン隔週投与で脂肪組織から分泌されるアディポネクチンの量が、なんと50%以上増加する。そして、これが筋肉などの代謝の中心シグナルの一つAMPKを活性化させ、筋肉内での糖代謝、TCAサイクルの活性化を誘導していることを示している。

結果は以上で、まとめると、間欠的なプレドニンはグルココルチコイド受容体を介して、脂肪細胞転写のプログラムを変化させるとともに、アディポネクチンの分泌を促し、これが筋肉のAMPKを活性化し、エネルギー消費を高め、筋力をアップさせるという結果だ。

何故連日投与と間歇投与でこれだけの差があるのかについては、連日投与になるとNefat4cなどのアディポネクチン遺伝子のレプレッサーが連日投与で発現するからだと説明しているが、まだまだ解明が必要で、面白い話も出てくる可能性がある。

おそらく週一回の投与だと、プレドニンもほとんど問題はないと思うので、ひょっとしたら今後肥満対策に週一回のプレドニンという話が出てくるかもしれない。プレドニンというと患者さんの間では副作用の代名詞になっているが、印象が変わるかも。

  1. okazaki yoshihisa より:

    1mg/Kgのプレドニンを週1回投与することで、
    1)食べ過ぎによる肥満が防げ
    2)肥満による筋力低下が防げ
    3)組織学的に筋繊維上昇と脂肪細胞低下が観察できることを明らかにした。
    Imp:
    いやーープレドニンの副副作用?
    意外です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。